闘病の君 笑ってよ 病気克服の道化師 小児病棟巡り 北九州の林さん

西日本新聞 社会面 片岡 寛

風船で作った人形を持ち、笑顔を見せる林志郎さん=8日午後、福岡県久留米市 拡大

風船で作った人形を持ち、笑顔を見せる林志郎さん=8日午後、福岡県久留米市

 入院中の子どもたちに笑顔と元気を届ける道化師「コメディカル・クラウン」として活動する林志郎さん(41)=北九州市八幡東区=が8日、福岡県久留米市の久留米大病院小児病棟でパフォーマンスを披露した。林さんは小児がんの一つ、急性リンパ性白血病を6歳で発症。この病棟への入院と通院を3年間繰り返した。「病院での一日はつらく長い。少しでも楽しい時間を与えられたら」。赤鼻の道化師は、かつての自身の姿を子どもたちに重ね、各地の病院を訪れている。

 いくつものボールを自在に操るジャグリング。「大技に挑戦するよ」という掛け声の直後、ボールがポロリとこぼれると、病棟のプレイルームに子どもたちの笑い声がどっと響く。

 この日は道化師仲間2人と一緒にバルーンアートやパントマイムも披露し、病室を回った。病棟には今、0歳から高校生までの約50人が入院中だ。最初は道化師の大げさな動きに驚いていた子どもからも、次第に笑みがこぼれた。

 林さんが「クラウン・シロップ」の名で慰問を始めたのは9年前。きっかけは、この病棟で支援ボランティアをしていたときのことだ。病院に招いた道化師が、場の空気を明るく一変させた。だが費用がかかり、簡単には呼べない。「じゃあ君がやればいい」。後に師匠と仰ぐ道化師の勧めもあり、この道を決意した。

 「病棟を歩くとあっちで泣き声、こっちでも泣き声。子どもたちは痛かったりきつかったりする時間のほうが長い。笑顔や笑い声を一つでも増やしたい」と林さん。本業の消防設備士の傍ら、プロのパフォーマーとしても活動しながら、久留米大病院に毎年通う。ほかにも九州がんセンター(福岡市)をはじめ、佐賀や大分、ときには関東にも足を運ぶ。すべて無償だ。

 林さんには忘れられないひと言がある。訪れた小児病棟で、小学生の女の子にバルーンアートの作り方を教えたときだった。「私も年下の子が手術を頑張ったり、退院したりするときに作ってあげるんだ」。こう張り切っていた少女はその後、亡くなった。林さんは言う。「子どもたちが治療を終えて大人になった時、病気に悩む子のために何ができるのかを考えてくれたらうれしいです」 (片岡寛)

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