生活保護 面談にカメラ 「市職員の安全確保」「プライバシー侵害」 福岡市 7区役所個室に設置

西日本新聞 一面

天井に防犯カメラが取り付けられた面接室=3日、福岡市博多区の博多区役所 拡大

天井に防犯カメラが取り付けられた面接室=3日、福岡市博多区の博多区役所

 福岡市が生活保護の申請や相談を受け付ける全7区役所の面接室に、4月から防犯カメラを設置し、面談状況を動画で撮影している。市は一部の相談者から威圧的な言動をされたとして、犯罪防止や職員の安全確保を理由に挙げるが、市民が厳しい生活状況を説明する個室の録画は「萎縮につながる」「人権侵害」と指摘する声もある。危険回避とプライバシー保護の折り合いをどうつけるか。識者は十分な配慮を求めている。

 市によると、カメラは各区役所の保護課にある面接室の天井に取り付け、トラブル発生時など、課長が必要と認めた場合に撮影する。一つの課に1台を目安とし、現在は計10台を設置。録音はしない。壁に「防犯カメラ設置」と表示し、本人の同意を得なくても撮ることができる運用にしている。これまで東区役所で5件を撮影したという。

 録画装置は課内に置き、画像は7日間保存した後に上書きする形で消去する。警察から画像提供を求められた場合は、必要最小限で可否を検討するという。

 過去に職員が面接室で暴力を振るわれたり、刃物を見せられたりし、不当要求とみられる事例があったため、設置を決めた。運用ルールは要領で定め、市議会の可決が必要な条例は制定していない。市保護課は「面接室全てには設置せず、撮影も必要な時しかしない。申請権の侵害には当たらず、プライバシーも保護しており、条例制定は必要ないと考えた」と説明した。

 カメラ設置に対し、市民団体などから批判が寄せられ、市は過去の事例を確認。職員が威圧的な言動をされたケースは、2015年度から今年9月までに約20件あった。このうち8件は、相談者が公務執行妨害などの疑いで警察に逮捕されたという。

 厚生労働省によると、生活保護の窓口や面接室へのカメラ設置は「自治体の庁舎管理の問題」として全国状況は把握していない。運用ルールはなく、是非も判断していないという。

■乱暴で過剰な警備

 花園大・吉永純教授(公的扶助論) 市民は困窮に陥るなどして相談しているのに、犯罪や不当要求の予備軍と見ているようで乱暴だ。福岡市は無制限に撮影せず一定の配慮をしているが、ごく例外的なトラブルのため設置するのはプライバシー保護の面でも過剰な警備。犯罪の証拠を残すため警察が設置を勧めることもあるようだが、対応は防犯ベルで十分だろう。

■撮影根拠に条例必要

 鹿児島大・宇那木正寛教授(行政法) 最高裁判例は、個人は誰でも同意なしに容貌を撮影されない自由があるとしており、今回の対応はプライバシーや肖像権の制限に当たる。地方自治法は市民の権利を制限する際は条例を制定するよう定めており、撮影には根拠として条例が必要だ。どんな場合にどこまで撮影するかを議会に諮り、民主的に合意を得るべきだ。

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