【ラガーマン記者が読み解くW杯】ゼロからラグビー(9)ジャッカル 攻撃権の争奪に妙味あり

西日本新聞

日本―サモア戦で、相手の突進を阻むリーチ選手(左)とファンデルバルト選手。攻撃の選手が孤立すると、ジャッカルのチャンスが生まれる 拡大

日本―サモア戦で、相手の突進を阻むリーチ選手(左)とファンデルバルト選手。攻撃の選手が孤立すると、ジャッカルのチャンスが生まれる

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の日本代表の1次リーグ第3戦、サモア戦での勝利で一躍注目されたプレーがある。

 「ジャッカル」だ。

 タックルで倒れた相手に瞬時に近寄り、立ったまま上半身を前に倒し、両腕を差し込んで相手側のボールをもぎ取る。試合では、フランカー(6番)のリーチ・マイケル選手のジャッカルが最初のトライにつながり、ナンバーエイト(8番)の姫野和樹選手はピンチを救った。

 快足の松島幸太朗、福岡堅樹両選手のようにトライを奪う選手だけでなく、攻撃権を奪う選手が、ラグビーには欠かせない。

 日本が取ったトライ4本のうち2本はジャッカルから。前半27分、リーチ選手がジャッカルで相手ボールを奪うと、スペースが狭い右側にいた司令塔のスタンドオフ(10番)田村優選手が広い左側に回り込み、長いパスを放って外側の姫野選手へ。連続攻撃を仕掛け、センター(13番)のラファエレ・ティモシー選手がトライを挙げた。

 チャンスは、ジャッカルで攻守が転換した瞬間に生まれる。田村選手の判断は、より相手と間合いがあり、前進の余地がある外側のエリアにボールを運ぶ狙いがあったのだろう。

 攻撃側は、密集から斜め後方に選手を配置してラインを作るので、ボールを奪われた直後は外側のスペースに相手との間合いが比較的大きい。ボールを奪った側は、このスペースを攻めるように外側にボールを運ぶケースが目立つ。

 スペースは、外側以外にも空く。ほぼ等間隔で横並びになる防御ラインとは違い、攻撃ラインは選手間の距離が近かったり、遠かったりする。攻撃権が移り、攻撃ラインから防御ラインに転じても、選手の間隔が広いスペースが残ることがある。ボールを奪った側はそこを突く。

 密集の背後にもスペースができやすい。後方に位置するウイング(11、14番)やフルバック(15番)などが走って密集に入り、そこでボールを奪われると、本来、相手キックに対応するウイングやフルバックがいない状態となる。ボールを奪った側は密集の背後にキックして前進できる。スクラムハーフ(9番)の流大選手が得意なプレーだ。

   ◆   ◆

 ジャッカルは相手の反則も誘う。サモアに4点差に迫られた後半9分。姫野選手がジャッカルしたのに、倒れた相手がボールを離さない。「ノットリリースザボール」の反則を奪い、ペナルティーゴール3点を取った。

 後半19分には窮地を救った。日本ゴール前のスクラム。ボールを持ち出したサモアの8番をリーチ選手がタックルで倒した。リーチ選手はすぐに立ち上がり、そこに近寄ってきた別の相手選手を押し込んで排除。タックルで倒れた選手は残された状態になり、そこを姫野選手がジャッカルで仕留め、ここでもノットリリースの反則を奪った。

 リーチ選手のように、相手選手を押し込んでボールの上を乗り越えることでも攻撃権を奪える。ただ、タックルして相手をあおむけに倒すなど優位な状況で成功し、さらに乗り越える選手が2人以上必要なことが多い。

 これに対し、ジャッカルは相手に押し込まれながらでも、1人でもボールを奪える。

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