対中戦略を問う(中)ヘリテージ財団上級研究員 ディーン・チェン氏 米と緊張「冷たい平和」に

西日本新聞 国際面 田中 伸幸

 -中国のこの70年間の変化をどう見ているか。

 「革命的だ。『アジアの病人』と言われ、自動車も航空機も造れなかった国が、今や世界の主要な大国となり、宇宙計画まで作るようになった。国内は建国時など過去に比べ、はるかにまとまっている」

 「ただ、経済の市場開放を進めた半面、政治改革の取り組みには終止符が打たれた。習近平国家主席の今、経済改革も終わろうとしているようだ。国有企業の問題など経済の自由化の動きは止まっている」

 -米中関係の現状は。

 「1979年の国交正常化以降、最悪の状態にある。これまでは政治的な対立があっても経済関係にまで波及させなかったが、両国は今、貿易戦争の真っただ中にある。背景にはもちろんトランプ大統領の存在がある。歴代大統領と違い実業界出身で、中国を政治的でなく経済的な視点から問題視し、過去の政権よりかなり入念な準備をして厳しく対処している」

 -米中貿易協議で年内に暫定的な「ミニ合意」をするとの観測があるが。

 「私はそうは見ていない。貿易戦争は今後数年にわたり長期間、続くだろう。トランプ氏が要求している知的財産権保護など国際的なルールを中国が尊重できそうにないからだ。中国の指導部を見ている限り、構造改革を断行する用意があるとはとても思えない」

 -軍事的な衝突が発生する可能性はあるか。

 「安全保障面でもライバル関係になった米中の衝突は常にあり得る。ただ、両国とも相手を直接の標的として攻撃したいわけでも、衝突に向かって突き進んでいるわけでもない。むしろ戦争を避けたがっている」

 「とはいえ、中国が重要視すると同時に、米国の同盟国や友好国にとっての国益でもある台湾、(沖縄県の)尖閣諸島、インドとの国境といった地域で利害がぶつかる結果、将来、衝突することは考えられる」

 -同盟国日本の役割は。

 「不測の事態に備えて、さらに防衛装備品を購入したり、九州の防衛体制を見直したりする責任がある。特に宇宙やサイバー空間における対処力は弱い。来年は東京オリンピックがあるが、地方自治体や民間企業もサイバー攻撃の標的になり得ることを忘れてはいけない。中国の脅威は軍事力だけにとどまらない」

 -米中は「新冷戦」状態に入ったと言えるのか。

 「米国とソ連と違い、米中は対立していても依然、大きな経済的な関係を保ち、多くの利益を共有している。新冷戦というより『冷たい平和』だ。共通の利益もなく、軍事的に非常に危険な状態に陥りかねなかった米ソ冷戦と比べれば米中関係はまだましだが、意見や立場の違いは極めて大きい。今後の行方には悲観的にも楽観的にもなれない」(聞き手はワシントン田中伸幸)

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ディーン・チェン トランプ米政権に近い保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」のアジア研究センター上級研究員。中国政治のほか軍事、安全保障問題に詳しい。53歳。

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