社会保障と税 将来見据えた改革続けよ 

西日本新聞 オピニオン面

 消費税率が10%に上がって、きょうで10日になる。

 軽減税率適用やキャッシュレス決済のポイント還元を巡る混乱は続いている。ただ1989年4月に税率3%でスタートして30年余りが経過しており、税制としては国民生活にすっかり定着したと言えるだろう。

 そもそも今回の税率アップは単なる増収策ではない。少子高齢化で増え続ける医療、介護といった社会保障費を賄うため、民主党政権時代に自民、公明の両党と合意した「社会保障と税の一体改革」が土台だ。自公両党への政権交代を経て当初予定より4年遅れたものの、2桁の消費税率(10%)を実現したのは一つの節目である。

 これと軌を一にするように、政府は先月、全世代型社会保障検討会議の議論を開始した。これまで主に高齢者が給付対象だった社会保障を子どもや若者、現役世代にも目を向け、将来にわたって持続可能な社会保障システムを実現する。そんな目標が掲げられている。

 人生100年時代に向けて、国民一人一人の将来不安を軽減する社会保障の構築こそ、最も優先度の高い政策課題である。同検討会議での幅広く充実した議論を期待したい。

 そこで気になるのが、安倍晋三首相の発言だ。「今後10年程度は消費税率を引き上げる必要はないのではないか」と繰り返している。事実上、新たな消費税増税の議論を封印するものと受け止められている。

 むろん私たちも新たな増税を早期に求める立場ではない。だが、せっかく社会保障システム改革の議論を始める局面で、財源に大きな制約を設けるのは政権の責任ある姿勢とは言えないのではないか。

 首相は在任中に消費税率を2度引き上げた。これを評価すべきだという声もあるが、民主党政権下での合意を実現したもので、首相のレガシー(政治的遺産)とは呼べないだろう。

 社会保障費の膨張はこれからが本番だ。国試算では2018年度の121兆円が、団塊の世代が全員75歳以上になる25年度には140兆円、40年度には190兆円に達する。専門家に「消費税率10%は通過点」との意見が根強いのはこのためだ。

 一方で、国の借金は巨大になり、その国内総生産(GDP)比は先進国で飛び抜けている。国債発行に頼った予算編成が続く財政構造にメスを入れない限り、さらなる消費税増税は国民の理解を得られまい。

 その上で、富裕層の課税強化や各種補助金の見直しなど、格差是正や痛みの伴う改革に与野党で道筋を付ける。それこそ首相に望まれるレガシーだ。

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