居酒屋客引き“無法地帯” 博多駅・天神 条例なく 悪質事例も

西日本新聞 一面 古川 大二 小川 勝也

夕方のJR博多駅筑紫口。周辺道路に客引き(手前左)の姿が目立つ 拡大

夕方のJR博多駅筑紫口。周辺道路に客引き(手前左)の姿が目立つ

客引き禁止条例を制定している自治体

 「サービスします」「地元の個人経営の店だから安心ですよ」-。通行人らを居酒屋に誘う客引き行為が福岡市のJR博多駅周辺や天神で増えている。しつこく付きまとったり、うそをついて予約店をキャンセルさせたりする悪質なケースもあり、客引きを巡る今年の110番件数は昨年同期比で約5倍。条例で飲食店の客引き行為自体を禁じる自治体が増え、「条例がない福岡に客引きを雇う事業者が流入している」との指摘もある。その実態は-。

 9月20日、連休前の金曜日夜。博多駅筑紫口周辺はサラリーマンや観光客でにぎわっていた。「お兄さん、20秒話を聞いて」。居酒屋名を記したカード片手に声を掛ける客引きが20~30人はいた。

 午後9時すぎ、その一人に「このビルの店は紹介できる」と声を掛けられ、同僚と2人で居酒屋に通された。名物と宣伝しているゴマサバやイカ刺しを注文すると「ありません」。定番の揚げ物中心に注文し、ビールで流し込んだ。

 午後11時前、店員は突然「閉店なんで、お会計お願いします」。他の客は帰る気配がない。あるべきメニューがなく、追い返されるような対応に納得できないが、1人4千円を支払った。

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 博多署などによると、客引きは地元の大学生が中心で筑紫口では夏場のピーク時に50人を超えた。署幹部は「客引きを使う大半は東京や大阪など県外の飲食店。三大都市圏は条例があり、福岡に出店した」とみる。

 客引きは複数の居酒屋と契約し客の売り上げの10~20%が報酬になるのが一般的。「飲食代は客引きの報酬込みで設定する」(関係者)という。

 今春からアルバイトする男子大学生(20)は週5回、夕方から深夜まで街頭に立つ。「月40万円は稼げる。普通のアルバイトなんて絶対できない」と笑う。

 客引き同士は約10メートルごとに活動区域を決め、店とはLINE(ライン)で空き状況を共有する。天神地区で客引きを使う居酒屋は「客引きを使っていない時よりも月当たり300万~400万円売り上げが多く、欠かせない。悪い点は改善し地域と共存したい」。

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 「道をふさいで邪魔」。筑紫口の客引きを巡る110番や相談は今年164件(9月末現在)で昨年同期比の5・1倍。天神や大名地区がある福岡中央署は227件で、同4・8倍だ。

 博多署は8月に偽計業務妨害の疑いで客引きをした男子大学生(21)を逮捕した。筑紫口で飲食店に入ろうとした客に「もういっぱい」とうそをついて、契約店に誘導した容疑だった。

 筑紫口の飲食店などが6月に結成した客引き対策協議会の阿南義治会長(65)は「地元の店の前に立ち、客を別の店に案内するなど迷惑な存在。観光でもイメージダウン」と憤る。

 ただ、摘発されるのは一部だ。福岡県内では、風営法や県迷惑行為防止条例で規制される風俗店の客引きと違い、飲食店の客引き行為は原則違法ではないからだ。捜査関係者は「行き過ぎた行為は取り締まる法令もあるが、客引き自体を禁じる条例が必要。観光客を狙って声を掛けるなど手口も巧妙化している」と警戒を強めている。 (古川大二、小川勝也)

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