マンションの郵便受けにたまるチラシ…

西日本新聞 オピニオン面

 マンションの郵便受けにたまるチラシ。普段はあまり読まないが、「私を変えた愛」という見出しに目が留まった。作家三浦綾子さんの文章だった

▼三浦さんは北海道旭川市生まれ。17歳からの7年間を「教壇に倒れるなら本望」と教職に打ち込む。敗戦後、小4の教え子の教科書に墨を塗らせた時、胸にぽっかり穴があいた。教師を辞め自堕落に過ごすうち、肺結核で長期療養。「真剣に生きよ」といさめてくれた幼なじみの涙で、キリスト教の信仰に目覚めたという

▼デビュー作「氷点」(1964年)は、キリスト教の教え「汝(なんじ)の敵を愛せよ」をテーマにしたサスペンス。「汗と涙は人のために流しなさい」との恩師の言葉を愛する少女が、実父が犯した罪を負って成長する

▼執筆時は雑貨店を営む主婦だった三浦さん。1年かけて深夜、寝床でこつこつ書いた小説が新聞懸賞の1位を射止めベストセラーに。その後もがんやパーキンソン病などの病と闘い、夫と二人三脚の口述筆記で執筆を続けた

▼そんな三浦さんがもし生きていたら嘆きそうなニュースが続く昨今だ。幼児を虐待し死なせた大人。原発マネーの還流で信頼を損なった電力会社経営陣…

▼チラシの三浦さんの文章が心にしみる。<どんなに罪深い生活をしてきた人でも、そのままでいい><おゆるし下(くだ)さいという人を神は喜んで迎えよう>。慈愛の作家。きょう10月12日が没後20年である。

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