【DCの街角から】米国人は危機に強い?

西日本新聞 夕刊 田中 伸幸

出発直前に遅延の案内が出たニューメキシコ州の空港。スタッフに詰め寄るような乗客はおらず、何事もなかったかのような静けさだった=6日 拡大

出発直前に遅延の案内が出たニューメキシコ州の空港。スタッフに詰め寄るような乗客はおらず、何事もなかったかのような静けさだった=6日

 米国内の出張で飛行機や列車のトラブルに出くわすのは日常茶飯事だ。1週間前に訪れたニューメキシコ州の空港では出発直前になって航空便に遅れが発生。私は幸い影響なかったが、数人の乗客は次の乗り継ぎ便に間に合わなくなった。その前の週にはニューヨーク市内の駅で、ワシントン行きの列車の乗降ホームが一時、誤って案内され、いったん車両に乗り込んだ後、慌てて別のホームまで走らされる羽目になった。

 今のところ、こうしたトラブルで旅程の大幅な変更を強いられたことはない。とはいえ、米国の公共交通機関は日本と比べて明らかに信用度が低く、毎回のようにひやひやさせられる。

 この点、米国人は慣れっこのようだ。駅員などに苦情を言う姿をたまに見掛けるものの、大半の人は淡々としている。1週間前のニューメキシコ州の空港では、居合わせた搭乗客の中に「何とか乗り継ぎ便に間に合うかも」という女性がいたが「今から乗る飛行機が予定通りに着くか分からないし、私は陸上選手でもない」と早々に翌朝の便へ予約を変更。文句も言わず、逆にいら立つ私を「よくあることよ」となだめてくれた。

     ☆    ☆

 今、米政界は連日、トランプ大統領の弾劾を巡る問題で大揺れだ。メディアは弾劾調査に絡む動きは細かなものまで「ニュース速報」として大きく報じている。だがそれにも動じず、淡々と受け止めている米国人が少なくないように感じる。

 トランプ氏の「ウクライナ疑惑」はもちろん解明されるべき問題だが、疑惑を追及する野党民主党側にこの騒動を来年の大統領選での勝利につなげたいとの思惑があるのは明白だ。米国の外交を見ていると、国内政治の混乱の結果、北朝鮮などに付け入る隙を与えている側面も否定できない。一連の政争が米国の国力をそぎ、危機を招いているように思えてならない。

 こんな見方を、出張先のニューメキシコ州で何人かの取材相手にぶつけてみた。だが、トランプ氏支持、不支持にかかわらず反応は図らずも似通っていた。「弾劾騒ぎは本当に醜い政争だが、よくあることだ」「様子を見るしかない」‐。

 こうした声が多いのは交通トラブルと同様「心配してもなるようにしかならないし、最後は何とかなる」という割り切った感覚からなのか。彼らの心の内はよく分からない。ただ、困難な局面でも少なくとも表向きは落ち着いて振る舞うことができる米国人の姿は、何事にも心配性の私にはうらやましく映る。

 もっともそれが、公共交通であれ政治であれ「改善はもはや不可能」との諦めから生じているのであれば、「お気の毒」と言うしかない。 (田中伸幸)

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