「助けて」言える社会に 福岡市で自殺予防シンポ

西日本新聞 ふくおか版 黒田 加那

シンポジウムで考えを述べるNPO法人「抱樸」の奥田知志理事長 拡大

シンポジウムで考えを述べるNPO法人「抱樸」の奥田知志理事長

 「子どもたちが『助けて』と言えず死んでいくのは、大人が助けてと言わないからだ」。県弁護士会は、引きこもりや不登校などによる自殺を予防しようとシンポジウム「だれも孤立させない社会をめざして」を開いた。ホームレスの自立支援などに取り組む北九州市のNPO法人「抱樸(ほうぼく)」の奥田知志理事長や、不登校経験者を受け入れる立花高(福岡市)の斎藤真人校長が対策の必要性を訴えた。

 9月28日に福岡市であったシンポで、奥田理事長は二つの事件に触れた。今年5月に川崎市で児童ら20人が殺傷された事件と、その直後に発生した東京で元農林水産事務次官が長男を刺殺した事件だ。

 前者では加害者、後者では被害者が引きこもり状態にあったとされる。川崎の事件を巡ってはテレビ番組でコメンテーターらが「1人で死ね」という趣旨の発言をし、インターネット上で賛否両論があふれた。

 「自己責任や身内の責任が社会の道徳となり、『助けて』と言えない、言わせない社会になっている」。奥田理事長はこう語り、「引きこもりは本人だけでなく家族も孤立している。『迷惑は悪だ』という考え方が彼らの孤立を助長している」と続けた。

 また、引きこもり当事者を家族が引き受け続ける一方、社会として担う仕組みがないと主張。居住支援などを通じて家族の負担を社会に分担することが必要と強調した。

      ◆

 立花高の斎藤校長は全校生徒約500人のうち、8割が中学時代に不登校を経験していると紹介。「名前を書けば入試に受かる」とのうわさについて「不登校だった生徒がどれだけの思いで学校に来て、答案に名前を書いているか。分かっていて落とせるわけがない」と認めた。

 中学時代に一度も学校に行ったことのない生徒も多い。入試問題や校内の掲示物などに振り仮名をつけていることや、卒業後にすぐ就職や進学をしなかった生徒たちの中には、社会に出る前のステップとして学校食堂で働いている卒業生もいることなどを紹介。「当たり前にとらわれない。不登校の子が安心していられる空間でありたい」と強調した。

 引きこもりの当事者や家族を巡る状況については「対立軸をあおり攻撃する、悪者探しをする傾向の社会で肩身の狭い思いをしている」との考えを述べ「引きこもりという現象を社会全体が追い詰めすぎているのでは」と警鐘を鳴らした。 (黒田加那)

福岡県の天気予報

PR

PR

注目のテーマ