米中貿易戦争「一時休戦」 「大統領弾劾」、香港デモ対応…難題抱え 

西日本新聞 国際面 川原田 健雄 田中 伸幸

 【ワシントン田中伸幸、北京・川原田健雄】米中両政府が対立緩和に向けて「第1段階の合意」に達した。米経済界からは「包括合意に向けた大きな一歩」と評価の声が上がるが、中国の産業補助金など対立が根深い問題は先送りしたまま。米国ではトランプ大統領の弾劾が浮上し、中国も香港の民主化デモへの対応に苦慮する中、今回は両者とも部分合意で「一時休戦」を図った意味合いが強い。

 「今日、中国と大きな合意をした。中国は米国の農産物を大量に買うことになる」。トランプ氏が11日夜、遊説先の南部ルイジアナ州で貿易協議の“成果”を報告すると、会場の支持者は大歓声を上げた。

 トランプ氏が仕掛けた貿易戦争の結果、中国向けの米農産物輸出は大幅に減少。中国製品への追加関税措置は米国の小売業者や消費者の負担となりつつあり、景気悪化を招けば、トランプ氏にとって大きな失点だ。それだけに今回、中国から取り付けた「米農産物の輸入拡大」は、支持基盤である農家などの不満を和らげる効果が期待できる。

 来年の大統領選で再選を目指すトランプ氏だが、環境は厳しさを増している。ウクライナ大統領への圧力疑惑で議会下院から弾劾訴追される可能性が高まるほか、シリア北部からの米軍撤収も与野党の非難を浴びている。今回の合意にはそうした批判から有権者の目をそらす思惑が透ける。

 トランプ氏は今後、第2、第3段階の部分合意を重ね、包括的な「大きな合意」に至る道筋を強調したが、米国内では懐疑的な空気が漂う。「休戦」で貿易戦争の悪影響をひとまず回避できれば、あえて包括合意を急ぐ必要はなく、再選後の2期目の公約として掲げることもできるからだ。

 今回、米側は12月に予定する第4弾の追加関税措置の見送りは明言しなかった。国内の政治状況次第でトランプ氏が再び強硬姿勢に転じる可能性もある。

 「米国内には与野党を問わず対中強硬論が強まっている。今回の合意が弱腰と受け止められれば、トランプ氏が見直しを迫られる事態も想定される。発表通りに中国と合意するかは分からない」とシンクタンク研究員は指摘する。

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 難題に直面するのは中国の習近平指導部も同じだ。

 「逃亡犯条例」改正案に端を発した香港市民の抗議活動は民主化にまで要求が拡大。習指導部にとって普通選挙の導入などは到底容認できない。

 だがトランプ政権は香港問題を巡る中国の対応を強くけん制。今月にはウイグル族への弾圧を理由に中国当局者や関連企業への制裁措置を発表した。人権問題まで絡めて圧力を強めるトランプ政権に習指導部は難しい対応を迫られている。

 貿易戦争の長期化で中国経済は減速傾向が続き、近く発表する7~9月期の成長率も低迷が予想される。米国が15日に発動予定だった追加関税率の引き上げはさらに景気を冷え込ませる恐れがあっただけに、今回はトランプ氏の支持基盤をにらんで農産物の輸入拡大を打ち出し、発動回避に持ち込んだ格好だ。

 中国は当初、米国が課した追加関税の全廃を合意条件に掲げてきたが、今回は触れなかった。事態打開に向けて当面の合意を優先したとみられる。

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