日本への尊敬と愛情を抱き 阿部仲麻呂氏

西日本新聞 オピニオン面

◆ローマ教皇(法王)来日

 11月23日から26日まで、キリスト教ローマ・カトリック教会の最高指導者、ローマ教皇(法王)が38年ぶりに来日する。前回、日本を訪れた第264代目の教皇はポーランド出身のヨハネ・パウロ2世だったが、すでに他界し、聖人の位に列せられた。今回、訪日するのは第266代目で、アルゼンチン出身の教皇フランシスコ(本名ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ)である。

 ローマ教皇はキリストの一番弟子、ペトロの後継者として教会共同体を導く役目を果たす世話役である。2013年に就任し、6年にわたり地球人口の3分の1のキリスト教関係者を導く現教皇は初ものづくしの世話役だ。初のイエズス会出身者、南米生まれ、フランシスコを教皇名に選んだ人物だからだ。

 現教皇の名前は13世紀に活躍したアシジの聖フランチェスコに由来する。この聖人は持ち物を貧者に捧(ささ)げ尽くして相手を豊かに満たした。キリストにならい、相手に対する愛情ゆえの自己犠牲を生き、晩年は十字架上のキリストと同じ苦しみを身に帯びた。聖人は教会共同体の見直しを図ったが、現教皇も教皇庁の刷新による徹底的な奉仕体制の充実に尽くす。教皇はいのちを育み、経済格差による人間の尊厳の抑圧との闘いを志し、各人を「大切な相手」として理解し共に生きる姿勢を貫く。

 イエズス会の創立者の一員、聖フランシスコ・ザビエルが日本にキリスト教を伝えてから470周年の今年は、教皇が日本に愛情を感じ始めて60周年にも重なる。1959年、ホルヘ青年が23歳のとき、アルゼンチンを視察したイエズス会のペドロ・アルペ日本管区長との貴重な出会いがあり、面談を通して日本の人々への尊敬と愛情、殉教者の姿勢への憧れをいだき、宣教師となる決意をする。数年の研修の後にイエズス会総長に日本行きの願書を提出したが却下され、アルゼンチン国内のキリスト者の教育・後継者養成に尽くした。教皇は広島や長崎の被爆に心を痛めつつも日本人の復興への努力から人間の可能性を学び、最近は福島の被災地の方々をも心に留める。教皇の左手首には日本製腕時計が輝く。常に相手を労(いたわ)り、相手の可能性を信じて伴走する教皇の親身な姿勢に間近に触れることで、同様の姿勢を身につけることができれば私たちの将来は平和に一歩近づく。

     ◇      ◇

 阿部 仲麻呂(あべ・なかまろ)カトリック神学者 1968年生まれ、東京都出身。神学博士(基礎神学、三位一体論、教父神学)、日本カトリック神学会理事などを務める。福岡と東京のカトリック神学院、桜美林大、上智大の兼任講師。著書は「信仰の美學」ほか。

PR

社説・コラム アクセスランキング

PR

注目のテーマ