日本「奇跡」越え悲願 ジョセフ流強化結実 ラグビーW杯8強

西日本新聞 総合面 大窪 正一

 悲願をかなえた。南アフリカを破り世界を驚かせた「ブライトンの奇跡」から4年。アジア初開催となったラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で日本代表が13日、スコットランドを破って決勝トーナメントに進出した。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)はたくましく成長した桜の勇士を満面の笑みで見つめた。

 2016年秋。元ニュージーランド代表(通称オールブラックス)の新指揮官は失望からスタートした。歴史的3勝を挙げた15年W杯で活躍した選手は、くしの歯が欠けるように代表から引退。招集しても「燃え尽き症候群」で応じない選手もいた。一方で残ったW杯経験組は成功体験に引きずられていた。

 前指揮官のエディー・ジョーンズHC(現イングランド監督)は猛練習だけでなく言動や服装など規律も厳しくチェックする管理型。「言われたことをひたすら実行した」。リーチ・マイケル主将が振り返るように「ロボット」に徹したことで負の歴史を塗り替える成果につながった。

 自主性を重んじる「オールブラックス」を経験したジョセフHCはさらなる飛躍に変革の必要性を感じたが、選手には「エディー流」に誇りと自負があり、両者に深い溝が生まれた。ジョセフHCは世界最高峰リーグのスーパーラグビー(SR)の「ハイランダーズ」を優勝に導いた経験があるとはいえ、W杯の指揮は未経験。世界的名将の前指揮官と比べ、選手が値踏みする空気もあった。

 その両者を橋渡ししたのが、ジョセフHCが信頼する参謀2人だ。20年来の盟友、日本ラグビー協会の藤井雄一郎強化委員長が潤滑油として選手の不満や誤解を解いた。ハイランダーズ時代からコンビを組むトニー・ブラウン攻撃コーチは戦術眼に優れ、多彩で柔軟な策を提示。結果を出すことで求心力を高めた。

 昨年9月の代表候補合宿。ミーティングに時間を割いた。ジョセフHCは「ラグビー王国」の考えを押しつけるのではなく、日本人の気質も踏まえ、選手の声に耳を傾ける姿勢を示した。日本代表の特徴は多国籍。ニュージーランドのオタゴ大で心理学を学んだ経験も生かし、甲冑(かっちゅう)を日本チームの象徴として宿舎に用意するなど結束を生む仕掛けも増やした。

 「エディーさんの時とは違う考えと手法で強化し、全く違うチームになった」とジョセフHC。SRの日本チーム「サンウルブズ」の経験や柔軟な戦術、豊富な練習量、選手主体の決断力…。躍進の要因は数多い。一つ一つが「エディーの呪縛」を解き放ち、真の「ワンチーム」になれたからこそ、重かった歴史の扉は開いた。 (大窪正一)

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