台風19号 今季の「脅威」はまだ続く

西日本新聞 オピニオン面

 記録的な豪雨を伴った台風19号が、東日本に甚大な災害をもたらした。

 各地で河川が氾濫し、濁流が住宅街を襲った。その光景は、東日本大震災の津波被害を思い起こさせるほどだ。

 政府は直ちに非常災害対策本部を設置した。被災地は広範囲に及ぶ。救命救助と被害拡大の防止に全力を挙げてほしい。

 台風は平年値で25・6個が発生する。今季の脅威はまだ続く可能性が大きい。最悪の事態を想定し、一人一人が備えたい。

 19号が伊豆半島に上陸した12日、大雨特別警報が13都県に出された。一度の災害で発表された数としては最多という。

 多くの死者・行方不明者が出ている。民家が倒壊し、道路は冠水した。土砂崩れも相次いだ。広い範囲で停電し、断水にも見舞われた。首都圏の交通機関はほぼ止まった。長野市の千曲川など複数の河川で堤防が決壊し、浸水した民家の屋上などから多くの人が救出を待った。

 九州も今年、台風17号による広域停電や、佐賀県を襲った記録的大雨による病院の孤立などを経験した。今回は、風水害で考えられるほとんどの事態を引き起こした複合災害である。

 台風は12月になっても発生することがある。気象庁の記録史上、最も遅く上陸したのは11月30日(1990年、和歌山県)だ。油断はできない。「自分は大丈夫」という考えは、災害時に起きる正常性バイアスと呼ばれる心理にすぎない。

 繰り返し呼び掛けたい。自宅や職場はどんな災害に遭う危険があるのか、市町村が作るハザードマップ(被害予測地図)での確認を急ぎたい。特に風水害の場合、近くに中小を含む河川や、崩落する危険がある崖がないかを調べ、同時に体育館など最寄りの避難所を確かめたい。

 非常食や水、携帯電話用のバッテリーに不足はないか。強風で飛来物となりうる植木鉢などは自宅周辺にないか。可能な限り、点検したい。

 私たちは、市町村が指示する「全域(全世帯)避難」の意味を誤解しないようにも、呼び掛けてきた。避難所に行くことだけが避難ではない。状況によっては外出する方が危険な場合がある。自宅の2階以上にとどまる垂直避難も有効な選択肢だ。

 台風19号は発生後、中心気圧が一時910ヘクトパスカル台に下がった。死者・行方不明者5千人以上を出した伊勢湾台風(59年)は上陸時に920ヘクトパスカル台だったことを考えれば、その猛威がよく分かる。

 近年の台風は、高い海面水温で発生する水蒸気をエネルギーに勢力を増しているとされる。命を守る最善の策を取りたい。

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