入学前に親ができること 菊池良和(九州大病院・吃音外来医師)

西日本新聞 医療面

吃音~きつおん~リアル(4)

 今回から、日本でも珍しい「吃音(きつおん)外来」での症例を紹介していきます。100人に1人の割合で存在するのに、顕在化しにくい“吃音のリアル”を知ってください。

 小学校入学まであと半年という頃に来院した保育園児のA君。両親が「吃音が治らない。小学校に入ったら、いじめられるのではないか」と不安に駆られて連れてきました。家族や親戚に吃音のある人はおらず、「意識させなければ自然に治るだろう」と、どこにも相談していませんでした。

 「話す言葉が『ぼ、ぼ、僕は』って繰り返すことある?」。こう尋ねると「うん、あるよ」とA君。すかさず、「A君の話し方をまねしたり、笑ったり、『何でそんなしゃべり方なの』と質問したりする人はいる?」と聞くと「今はいない」との返事。まだいじめの心配はないようでした。

 「困ったことがあったら、お父さん、お母さんに話してね」と伝えると、「うん、分かった」と笑顔を見せてくれました。両親には吃音に関する基礎知識と、小学校入学に当たって親ができることを伝えました。

 例えば、入学前にある就学時健康診断の際に個別相談があれば、わが子に吃音があることを伝え、吃音に関する資料を渡す。この時に伝えられなければ、体験入学などで伝えることもできます。学童保育に預ける場合、初日(4月1日)に紙にまとめて伝える方法が良いでしょう。担任などに渡す資料は私の著書「吃音のリスクマネジメント」(学苑社)のホームページから無料ダウンロードできるので、活用してください。

 A君の両親は入学後、保護者懇談会で担任や他の保護者に吃音について説明し、「からかわれることがあったら、助けてください」と呼び掛けました。今のところ、いじめやからかいを経験することなく、楽しく学校に通っています。

 吃音のあるわが子の将来に不安を感じるのは当然です。親ができることは、影響を最小限にするための環境調整だと思います。

 (九州大病院医師)

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