広がる「オンデマンド調査報道」 ローカル・メディア、協働で面白く 新聞週間始まる

西日本新聞 久 知邦 坂本 信博 福間 慎一

 あなたの暮らしにとって新聞は身近な存在ですか。読みたくなる、もっと知りたい記事や出来事は載っていますか。15日から新聞週間(21日まで)が始まりました。西日本新聞はいま、全国の新聞社とつながり、協力して記事展開する「地方紙連携」に力を入れています。テーマはさまざま。事件事故から、生活の困り事、学校の問題、医療のこれからなど、読者に寄り添い、もっと知りたくなるニュースを意識し、紙面を作っています。本紙の地方紙連携の現状を、警察官執筆料問題とオンデマンド調査報道(JOD)を例に紹介します。これからも全国の地方紙とタッグを組み、魅力ある新聞を届けていきます。

 「警察官が昇任試験の対策問題集を出版する民間企業から依頼を受け、設問や解答を執筆して現金を受け取っている」

 端緒となる情報を聞いたのは昨年春ごろ。関係者から入手した企業の執筆者リストには約500人分の氏名と執筆内容、金額などが詳細に記されていた。調べると、うち467人が警察庁と17道府県警に実在する幹部やOBであることが分かった。過去7年間で計1億円超が支払われ、最高額だった大阪府警の警視正には1500万円超が支払われた記録があった。

 取材班は各地へ飛んだ。多額の現金を受け取った警察幹部の住所を割り出し、福岡、熊本両県警をはじめ、兵庫、大阪、京都、奈良、愛知、神奈川、千葉、埼玉、宮城の11府県警で当事者への直接取材を重ねた。

 複数の幹部が事実関係を認めた段階で、友好関係にあるブロック紙や県紙に連携を呼び掛けた。疑惑が全国に広がる中、九州を拠点とする西日本新聞だけが報道しても、警察庁を頂点とする警察組織に黙殺される恐れがあったからだ。

 今年1月8日、北海道新聞、河北新報、新潟日報、東京新聞、中日新聞、神戸新聞、中国新聞、本紙の各朝刊で同じ記事を一斉に掲載した。記事は本紙が配信し、道新、河北、神戸は独自取材の要素を加えて大きく展開した。各紙とは日ごろから記事交換をしているが、この種の調査報道では初めての連携だった。

 その後も連日にわたり、企業側に「取扱注意」を含む警察の内部資料数千点が流出していたこと、一部の警察官が偽名や団体名を使って執筆していたことなどを報じた。京都新聞や神奈川新聞も加わって各県で疑惑の追及は続き、国会でも取り上げられた。

 そして7月12日。警察庁は多額の現金を受け取っていた大阪府警警視正ら3人を懲戒処分にし、18人を訓戒・注意の処分とした。ただ、その調査は身内に甘いものだった。中でも気になったのは、数千点に及んだ内部資料の流出について、ごく一部を除き誰が流出させたか分からなかったと結論づけた点だ。傷口を広げないために曖昧な幕引きにしたと言わざるを得ない。

 とはいえ、警察幹部と出版社との不適切な関係は止まったと聞くし、昇任試験の内容を改めた県警もあるなど報道の成果を感じる。地方紙が連携した今回の調査報道は、新聞の新しい可能性を秘めている。(社会部・久知邦)

PR

社会 アクセスランキング

PR

注目のテーマ