広がる「オンデマンド調査報道」 ローカル・メディア、協働で面白く 新聞週間始まる (2ページ目)

「あなたの特命取材班」フォロワーは1万2000人超に

 無料通信アプリLINE(ライン)などで記者が読者と直接つながり、双方向のやりとりと新聞社の取材力で、疑問解消や地域・社会の課題解決を目指す本紙の「あなたの特命取材班」(あな特)がスタートしてまもなく2年。LINEでつながる「あな特通信員」は約1万2千人に達した。寄せられた調査依頼は7千件を超え、約300本を記事化してきた。

 かんぽ生命保険の不正販売問題をはじめ、さまざまなスクープが生まれた。携帯電話会社がキャリア決済(電話料金合算払い)の不正利用詐欺被害補償制度を整備したり、福岡市が新生児聴覚検査費用の全額助成を始めたりと、あな特の報道が制度の改善につながった事例も少なくない。

 あな特を皮切りに「オンデマンド調査報道」(ジャーナリズム・オン・デマンド、JOD)に取り組む地方紙も相次いでいる。
 本紙は各紙と①取材・報道手法のノウハウ②掲載記事③調査依頼や内部告発の情報-を共有し、協働調査報道などに取り組む「JOD連携協定」を結んだ。パートナーシップの輪は本紙を含め15紙、2放送局、1ローカルウェブメディア-の18媒体に広がった。

 例えば、9月18日の朝刊1面に掲載した「『ラグビーW杯歓迎』反則?」も地方紙連携の成果だ。

 ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会の開幕前に、札幌市のスポーツバーを営む男性から寄せられた疑問が端緒になったこの記事。まず北海道新聞が報じた。それに、岩手日報が地元の岩手県釜石市の事例を加えて転載。さらに本紙が九州の状況を盛り込んで記事化した。その後、神戸新聞や東奥日報も転載するなど、まるでラグビーのパス回しのように地域発の報道がつながっている。

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 地域に根ざす報道機関の連携は、世界の潮流にもなりつつある。

 欧米の地域ジャーナリズムに詳しいNHK放送文化研究所の青木紀美子・研究主幹によると、米国では、地方紙の衰退で地域の情報が報じられなくなる「ニュースの砂漠」と、デジタル空間でフェイクニュース(偽情報)を含む膨大な情報が飛び交う「ニュースのジャングル」が深刻化している。

 そんな中、地域メディア同士が協力して取材力と発信力を高め合い、報道への信頼向上を目指す「連携ジャーナリズム」の挑戦が始まっている。メディア活動を支援する米ナイト財団は2019年が「ローカル連携の年」になると予想し、アルベルト・イバーグエン会長は「課題の解決策は地域にあり、地域から信頼は生まれる」と指摘しているという。

 読者とつながり、さらに取材態勢も地元密着度も各地域で最強のメディアである地方紙同士がつながる。そうすれば、全国紙や通信社よりも深く、内容の濃い報道を読者に届けられると確信している。読者とともに、あな特の挑戦は続く。(クロスメディア報道部・坂本信博、福間慎一)

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