機能集約、安定経営へ 小城、多久の市立病院統合 医師偏在、医療過疎回避も

西日本新聞 佐賀版 梅本 邦明

 医療費抑制のため国が議論を促す公立、公的病院の再編・統合を巡り、県内では小城市民病院(99床)と多久市立病院(105床)の統合計画が進んでいる。県中部地域は人口が減り病床数が過剰になる見込みで、両病院は統合により機能を集約して医師の偏在解消や経営健全化を目指す。建設予定地は医療過疎地になる懸念があった多久市に決まったが、地元には疑問や不安の声があり、両市は計画内容を説明する方針だ。

 「この辺りで唯一の総合病院。遠くに離れたら困る」。唐津市厳木町広瀬から車で多久市立病院に通院する80代男性はため息をつく。脳梗塞を患って歩行が不自由になり、運転免許の返納を検討中。「新病院への交通の便が良ければいいが…」と懸念した。

 県医務課によると、県中部地域の病床数は5022床(2018年度時点)で、団塊世代が75歳以上となる25年に約1200床が過剰になる見込みだ。国は病院の経営効率化に向けて改革を促しており、小城、多久両市は16年度、両市長や病院関係者でつくるネットワーク研究会を発足させ、老朽化した両病院のあり方について議論を開始。17年1月、研究会は「建て替え時期を逃さず、両病院を統合し、新病院を設立することが望ましい」とする報告書をまとめた。

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 両市が統合を選んだのは病院機能を維持、強化するためだ。18年度の収支は小城市民病院が8778万円、多久市立病院が2370万円の赤字。両市によると単独で建て替えれば、県中部地域で過剰とされる病床数は減少を余儀なくされる可能性があり、診察数が少なくなると医師の確保が難しくなる。逆に統合すれば地域で限られた医師や医療スタッフを集約し、安定経営を期待できる。

 今年7月には新病院の候補地検討委員会が発足。8月には、建設予定地を両病院からほぼ等距離(約5キロ)にある多久市東多久町別府の民有地に決めた。検討委委員長の池田秀夫・県医師会長は「本来なら人口の多い小城に建てるのが自然な流れかもしれないが、多久は拠点病院がなくなる恐れがあった」と話す。

 病床数20床以上の民間病院は、多久市は市中部に1カ所(精神科除く)しかない。一方、小城市は市民病院近くと市南部の計2カ所で、さらに隣の佐賀市には佐賀大医学部付属病院や県医療センター好生館がある。小城市担当者からでさえ「多久市の方がより医療過疎への切迫感があった」との声が聞かれた。

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 両市は9月中旬、新病院建設に合意。土地購入を含む建設費の負担は多久市が9割、小城市が1割となり、運転資金が安定経営に必要な水準を下回った場合、多久市が全て補填(ほてん)する。

 ただ、建設予定地の選定や建設費の負担割合を巡り、地元には不安や不満がくすぶる。多久市の西多久老人クラブの河内嘉孝会長(75)は「建設予定地は牛津川に近く、8月の大雨で冠水した地域なのに大丈夫だろうか」と懸念。ある多久市議は「合意条件は多久の財政負担が大きい。また、新病院は市中心部を外れて東部に寄っている。再度議論すべきだ」と訴える。

 両市は2020年内に診療科目や病床数を盛り込んだ基本計画を策定、25年春までの開院を目指す。多久市は25日に市中央公民館で開く市政報告会で、統合の理由や建設予定地選定の経緯を説明する。小城市も市民への説明を検討している。(梅本邦明)

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