台風広域被害 温暖化踏まえ治水強化を

西日本新聞 オピニオン面

 東日本で記録的豪雨を観測した台風19号は多数の死者・行方不明者をもたらした。家屋の浸水や交通インフラの損壊など広域的被害の全容は15日夜現在、なおつかめていない。極めて深刻な事態である。

 政府は行方不明者の捜索や被災者の救助、支援に全力を挙げてほしい。同時に、なぜこれだけ甚大な被害が起きたのか、政府を挙げて詳しい検証を進め、治水、洪水対策の在り方を根底から見直す必要がある。

 今回の被害で注目すべきは、東海・甲信越から東北までの広範囲で河川の堤防決壊や越水が同時多発的に起きたことだ。

 暴風域が直径600キロ以上に及んだ19号は当初、強風被害が懸念された。先の台風15号で千葉県を中心に電柱多数が倒壊して、ライフラインが長期間ダウンする事態を招いたからだ。しかし実際には、強風と同時に大雨を伴いながら列島に接近、上陸し、気象庁が静岡から岩手に至る東日本の13都県に大雨特別警報を発令する、前例のない状況をもたらした。

 19号が上陸した12日の1日降水量は神奈川県箱根町の942ミリを筆頭に愛知、三重などを含む16都県の約80カ所で過去最高を更新した。この豪雨で、長野県の千曲川をはじめ40以上の河川で堤防が決壊したほか、越水した河川も200カ所前後に上る。住宅地への浸水は主に夜間に広がり、犠牲者を増やす要因にもなったとみられる。

 道路や鉄道網の損壊なども広域に及び、安倍晋三首相は15日の参院予算委員会で「生活や経済活動への影響は長期化する懸念がある」と危機感を示した。

 折しも政府は先週、15号の初動対応の遅れに関する検証作業を始めたばかりだった。ここはその検証チームを再編成し、今回の被害も踏まえた、あるべき対応策を検討すべきだろう。

 特に求めたいのは、堤防の復旧など応急的な措置にとどまらず、原因を多角的に探り、新たな対策を模索することだ。今回の水害は、堤防の決壊に加え、排水路の水が河川に流れずにあふれる内水氾濫▽河川本流の流れに遮られて支流の水位が上昇するバックウオーター現象-など多様な要因が重なった可能性が高い。

 地球温暖化に伴うとみられる気候変動で今回のような「スーパー台風」の発生、広域的豪雨の被害は毎年のように続く恐れもある。それを前提にすれば、森林の保水力やダムの機能などを含めた治水全般の強化が喫緊の課題だ。

 災害に負けない「強靱(きょうじん)な国土建設」は安倍政権が当初から掲げた公約でもある。最優先課題として取り組んでほしい。

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