不登校や引きこもり 「価値観のチャンネル」合わせ寄り添う 社会的孤立に訪問支援

西日本新聞 くらし面 河野 賢治

 先駆け、佐賀のNPO谷口さん講演

 不登校や引きこもり、非行といった援助が必要な子どもや家族を、福祉の専門職などが訪問支援する「アウトリーチ」という方法が注目されている。引きこもりの人が100万人を超えるとみられる中、声を上げられず「社会的孤立」に陥った人を、どう支えるかは緊急の課題だ。福岡県大野城市で5日に開かれた「未来福祉フォーラム」(NPO法人まちづくりLAB主催)では、この手法を先駆的に導入した団体が事例報告した。

 報告したのは、アウトリーチをいち早く取り入れた佐賀県武雄市の認定NPO法人「NPOスチューデント・サポート・フェイス」の谷口仁史代表理事。国や同県、佐賀市などの相談支援に関する14事業で委託を受けたり、運営に携わったりしている。相談対応は年間6万2千件を超える。

 当事者からメールなどで届く声は悲痛だ。「助けて」「殺してやる」「薬をたくさん飲んだ」-。「相談に来るのを待つ従来型の支援では、立ち行かなくなっている。だからアウトリーチが大切」と谷口さんは力を込めた。

 当事者は専門機関の手助けで改善しないと、ますます孤立することがあるという。谷口さんの法人につながる人の約6割は、既に行政など専門機関の援助を受け、そこから紹介された人たち。教育や医療、福祉などの分野が別々に関わり、違ったアプローチをすると、本人は不信感を抱いて立ち入りを拒むようになる。ますます相談しにくくなる悪循環に陥る。

 そこで、谷口さんは接触前に本人の拒絶をいかになくすかを重視する。家庭の状況やこれまでの支援の経緯を調べ、趣味などの「価値観のチャンネルを合わせる」作業をする。「『これまでの人と違うな、この人なら分かってくれるかも』と思ってもらう工夫が必要」。入念な準備がないまま接触すると「強引な家庭訪問」になり、傷を深くする恐れがあるからだ。

 その実例として、谷口さんは法人が関わったある30代男性を挙げた。引きこもりで孤立し、既に教育や医療、福祉関係者など20人近くが入れ替わりで関わっていた。援助が本人のニーズに合わず、問題が長期化していた。

 法人には職員とは別に約250人の登録スタッフがおり、それぞれが持つ資格は臨床心理士や社会福祉士など20種類を超す。当事者の家庭が貧困や家庭内暴力など複合的な課題を抱えていることもあり、多様なスタッフが個別での対応と、チームによる見守りを併用して立ち直りを支える。

 谷口さんは「『どんな境遇の子も見捨てない』という強い覚悟を持たないと、孤立には対応できない」と強調。待ちの姿勢から、届ける形へ。官民のさらなる連携を呼び掛けた。

 福岡の団体も展開、ニーズ多く課題も複雑

 フォーラムを主催したNPO法人「まちづくりLAB」(福岡市)も、不登校などの悩みがある子どもと家庭に、アウトリーチ型の支援を続けている。ニーズが多い上、家庭の問題は複雑さが増しており、対応は難しいという。

 活動は、家庭を訪れて援助につなげる無料の「訪問型相談支援」と、子どもに勉強を教えるなどして寄り添う有料の「ゆうがお塾」が柱。2018年度の利用は「訪問型相談」が延べ204件、「ゆうがお」が同499件で年々増加している。「ゆうがお」は19年度、学習だけでなく寄り添いを重視して「ゆうがおサポート」と名称を改めた。

 対象は保護者や児童相談所、別のNPOから紹介されることが多い。本年度から訪問型相談を福岡県大野城市と共同事業で実施しているが、永田充理事長は「助けが必要な家庭は本当に多く、選別が必要なほど」と深刻さを感じている。

 不登校が課題とみて援助を始めても、家庭内暴力や虐待、生活困窮などが絡み合っている例は少なくない。解決するには、行政や民間支援団体が個別ケースごとにどんなチームを組んで対応するかが大切になる。永田理事長は「さまざまな支援者が一枚岩になってチームを組む仕組みが必要ではないか」と話す。

(河野賢治)

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