【ラガーマン記者が読み解くW杯】ゼロからラグビー(11)モール 止められるか「世界最大」の塊

西日本新聞 入江 剛史

 ラグビーワールドカップ日本大会の1次リーグの最終戦で日本代表はスコットランド代表を破り、4戦全勝で決勝トーナメント進出を決めた。海外選手との体格の差から苦杯をなめてきた日本ラグビーの歴史の転換点となった。かつてのように、敵味方で押し合うモールで粉砕されることもない。だが、20日の準々決勝で戦うのは、フォワード(FW)平均身長が190センチ超、平均体重が120キロ近い南アフリカ。「世界最大」とも称される塊を止められるのか-。

 日本-スコットランド戦の後半36分。7点差を追うスコットランドは、タッチラインの外の選手がボールを敵味方の2列の真ん中に投げ入れる「ラインアウト」からモールを組んだ。

 日本の22メートルライン付近、押し込んでトライを奪い、ゴールキックまで決めれば同点という場面だ。しかし地鳴りのような声援を背に、日本はきっちり止め、そのまま逃げ切った。今大会ではモール防御が安定している日本。逆に武器として押し込む場面も目立つ。

 選手がボールを持った状態で敵味方が押し合うモールは、ラインアウトから組むことが多い。敵陣深く入っていれば、モールを押し込み、そのままトライを奪える。ただ中盤のエリアはどうか。縦100メートルもあるグラウンドで数メートルを押し込む利点がどこにあるのか。

 ラインアウトからはモール以外にも有効な攻撃ができる。ラインアウトに参加していないバックス(BK)の選手は敵味方の列から互いに10メートル離れなければならず、20メートルもの間合いがあるから、仕掛ける側の選択肢が広がる。ラインアウトに並ぶFWとBKには段差ができた状態になっており、このスペースも狙い目だ。

 だが、モールをある程度押し込むとラインアウトは終了する。防御の選手が10メートル離れた位置からモールの最後尾まで上がれるようになり、間合いが詰まってしまう。空間の優位性を捨てでも、モールを押す理由とは何か。

 グラウンドの横幅は70メートル。モールを押すと、FWの選手がライン際の一カ所に集まるので、70メートルの広大なスペースでBK同士の勝負になりやすい。防御の選手は前に上がってくるから、その背後にスペースができ、そこに高く蹴り上げるハイパントなどで攻めることもできる。

 さらに、防御側が押し込まれてたまらずモールを崩せば反則となる。そこから攻撃側がタッチラインの外に敵陣深く蹴り出すと、自らがボールを投入するラインアウトになるため、さらにモールで攻めることができる。

   ◆    ◆

 モールの優劣はどう決まるのか。まず挙げられるのは、かつての日本選手が外国人選手に差をつけられていた体の大きさ、そしてパワー。さらに、一つの塊となって防御の圧力をいなすように方向転換できるかも重要になる。

 そもそもモールの中で選手が何をしているのかを見ていきたい。ラインアウトからのモールで考えると、ジャンパーが跳び上がって空中のボールを捕って地上に足をつけると、持ち上げていた左右の選手2人がジャンパーの両脇に密着して固める。ここに隙間が空くと防御の選手が頭を突っ込んできて、モールの塊が割れて、ばらばらになってしまう。

 原則はこうだ。まずは最前列の3人が固まる。次に真ん中のジャンパーからボールをもぎ取るように4人目の選手が入る。そして、ほかの選手も縦長にモールに加わっていく。ボールは、手渡しで最後尾まで回す。

 ボールが最後尾にあれば、いつでも持ち出してモール周辺を攻めることもできるし、BKに展開することもできる。レフェリーは、モールが2回止まったと判断するとボールを出すように命じるから、すぐに対応できる。

 このモール、よほどの力の差がなければ真っすぐ押し続けることは困難だ。真ん中のジャンパーに向かって力を合わせて押すと、防御の圧力が薄い左右のいずれかにモールが傾く。上空からみれば、右が前に出たり、左が前に出たりする。

 攻撃側は、右が前に出れば、真ん中のジャンパーでなく、その右隣の選手を中心に押すように方向を転換する。すると、モールが塊として右方向にずれるように前進する。

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