カンボジア緊迫 独裁政権、強硬策辞さず 逃亡元野党党首帰国へ

西日本新聞 国際面 川合 秀紀

 【バンコク川合秀紀】カンボジアで2017年に解党処分となった最大野党の元党首で海外逃亡中のサム・レンシー氏ら元党幹部が11月、約4年ぶりに帰国を計画している。レンシー氏は30年以上実権を握るフン・セン首相の退陣と民主化を要求しているが、政権側は帰国すれば政権転覆を狙った扇動容疑などで逮捕する方針だ。レンシー氏も国際社会に正当性を訴えて帰国を強行する構え。互いに引くに引けない状況となっており、緊迫の度は高まっている。

 レンシー氏はカンボジア救国党(CNRP)の創設者の一人。1990年代から政権批判を続け、逮捕を逃れるため海外逃亡と恩赦による帰国を繰り返した。救国党は近年の選挙でフン・セン氏率いる与党に迫る議席を獲得したが、レンシー氏は2015年に逮捕される恐れが強まり、海外に逃亡。救国党も17年に解党に追い込まれた。与党は翌18年の下院総選挙で全議席を独占。当局はその後も救国党関係者の拘束を続け、一党独裁色を強めている。

 フランスを拠点とするレンシー氏は8月、逃亡中の元党幹部とともに、カンボジアの独立記念日である11月9日に帰国すると発表。「民主主義の復権」を掲げ、市民や軍・警察に蜂起を呼び掛けた。9月には政権の弾圧を批判し「帰国は対話と和解のため」とする声明を国連人権理事会に提出。米国や韓国などで講演を行ったり、会員制交流サイト(SNS)に投稿したりして、帰国支持の世論を国内外で広めようとしている。

 これに対し、政権側は強硬姿勢を強める。帰国すれば即逮捕する方針に加え、市民が帰国を支援したり、インターネットで賛同を表明したりするだけで違法になると主張。米政府系のラジオ・フリー・アジアなどによると、フン・セン氏は10月初め「帰国キャンペーンに参加する者は誰でも処罰対象になる」と警告し、軍の出動も示唆した。

 海外逃亡中の救国党関係者は「当局の締め付けは厳しく、党関係者の逮捕が相次いでいる」と危機感を示す。ある専門家は「政権は世論が『帰国支持』に傾くのを恐れている」とみる。

 ただ、カンボジアの基幹産業である縫製品輸出を巡り、欧州連合(EU)が来年早々にも人権状況の悪化を理由に関税優遇措置を停止するかどうか判断する。停止となれば打撃は大きく、政権側も強硬手段を取りにくい状況にある。

 カンボジア政治に詳しい新潟国際情報大の山田裕史准教授は「当局はレンシー氏らを逮捕して有罪とした上で、国内外の反発の程度を見極め、恩赦を与える可能性がある」と話す。

【ワードBOX】カンボジア救国党

 2012年、サム・レンシー氏とケム・ソカ氏率いる2党が合流して発足。13年下院総選挙では与党68議席に迫る55議席を獲得。17年6月の地方選でも躍進し、政権交代の可能性も取り沙汰されたが、同年9月、党首のケム・ソカ氏が米国と共謀して政府転覆を謀った疑いで逮捕され、党も11月に解党処分となった。

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