国籍より「同じ釜の飯」 田代 芳樹

西日本新聞 オピニオン面 田代 芳樹

 「なぜラグビーの日本代表は外国出身選手が多いの?」

 熱戦が続くワールドカップ(W杯)をテレビで観戦中、家族から問い掛けられた。同じような疑問を持つ人は少なくないだろう。正直なところ、私も以前は同じような違和感を抱いていた。

 約30年前、大学ラグビーの観戦によく足を運んだ。そこで、応援していた母校の選手が次々となぎ倒され、なすすべもない展開に度肝を抜かれた。相手校の選手は一回りも二回りも大きく、大人と子どもの違いぐらいあった。

 大東文化大のトンガ出身の留学生たちだった。大東大は日本の学生ラグビー界で留学生受け入れの草分け的存在で、一気に強豪校となる。1986年、全国大学選手権で初優勝を飾り、88年、94年と頂点に立った。

 「留学生を入れてチームの強化を図るなんて…」と、じだんだを踏んだ記憶がよみがえる。

 そんな悔しさもあって外国人の加入に否定的なまま迎えた前回のW杯イングランド大会だった。目にしたのは、出身国や国籍の違う選手たちが桜のジャージーを身にまとい、一つの目標に向かって全力を尽くす姿だ。南アフリカを破る大金星に震えた。

 「彼らは母国の代表より日本を選び日本のために戦っている最高の仲間だ」「国籍は違うが日本を背負っている。これがラグビーだ」

 勝利に貢献した五郎丸歩選手は試合後、ツイッターでこう発信した。

 国籍が条件のオリンピックやサッカーW杯と違い、ラグビーは継続して3年(2020年12月31日からは5年)以上居住などの条件を満たして各地域のラグビー協会に所属すれば、国籍にかかわらず代表になれる。外国出身の選手が多いチームは少なくない。

 ユニークな代表規定はラグビー発祥の地、英国の歴史と深く関係する。かつて植民地だったニュージーランドなどに渡った英国人らに配慮し、一緒に生活をして練習した選手も代表となれるようになったという。

 今大会、日本代表31人のうち海外出身や外国籍の選手は15人を数える。「ワンチーム」の合言葉で共にボールを追いかける姿が胸を打つ。注目すべきは、ベスト8進出という快挙だけではない。

 国内では深刻な人手不足の中、多くの外国人が担い手となっている。国籍を超えて「同じ釜の飯」を食った仲間がスクラムを組むラグビーは、社会が求める多様性の鑑(かがみ)だと言えないだろうか。共生社会に向かうヒントが、そこにある。 (デジタル編集チーム)

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