【動画あり】それ「ヒアハラ」? 「聞こえにくい」に理解と支援を 耳元で大声/マスクのまま話しかけ 

西日本新聞 くらし面 新西 ましほ

 難聴の人に対し、耳元で大きな声で話したり、マスクをしたまま対応したり。「聞こえ」に対する理解不足や配慮のなさを「ヒアリング・ハラスメント」(ヒアハラ)と名付け、なくそうという動きが広がっている。難聴者数は人口の約1割と推計され、高齢化によって今後も増加が見込まれており、早急な対策が求められる。

 9月中旬、動画投稿サイト「ユーチューブ」で難聴と認知症をテーマにした短編映画「気づかなくてごめんね」が公開された。

 俳優の石倉三郎さんが演じるのは、家族と話さなくなり、近隣でトラブルを起こすようになった高齢の男性だ。周囲からは認知症だと思われていたが、実は難聴。対話支援スピーカーを使って再び意思疎通ができるようになり、笑顔を取り戻すストーリーだ。

 映画はNPO法人日本ユニバーサル・サウンドデザイン協会が制作。同団体は昨年「ヒアリングハラスメント・ゼロ推進委員会」を立ち上げ、医療機関や介護施設で聴覚についてのセミナーを開いており、啓発活動の一環で企画した。

 理事長で、広島大宇宙再生医療センターで聴覚の研究をする中石真一路(しんいちろう)さん(46)は「難聴と知ると大きな声で対応する人が多いが、聞こえ方は人それぞれ。たとえば加齢による難聴は感音性難聴が多く、大きな音はひずんで余計聞こえない」と指摘する。

 聴覚障害は見た目では分かりづらい。会話の内容が聞き取れずにコミュニケーションが分断されて孤立してしまうほか、学校の授業についていけなかったり、認知症と誤解されたりするケースも少なくない。中石さんは「聞こえにくい側に障害があるのではなく、聞こえについての理解や支援のない社会が障壁を生み出している」と指摘する。

 聞こえないと決めつけ、家族や手話通訳者と話すといった対応もヒアハラに当たる。会は、聞こえにくい人とのコミュニケーションでは、マスクを外し相手を見て話す▽口を大きく開け、文節で区切ってゆっくり話す▽筆談を併用する▽対話支援スピーカーなどの機器を活用する-といった対応を呼び掛け、動画にして合わせて公開中だ。

 NPO法人北九州市難聴者・中途失聴者協会の神矢徹石(てつじ)理事長は「ヒアハラの中には本来なら差別に該当するものもあるが、現状は社会が差別に対して無自覚になっている。ハラスメントという表現を使うことで、社会に意識付けるきっかけになるのではないか」と話している。
 (新西ましほ)

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