特集「優生保護法と女性運動」 第4号 70~80年代 福岡の歩み 女性史研究会

西日本新聞 くらし面 下崎 千加

 戦後の福岡の歩みをフェミニズムの視点で掘り起こしている福岡女性史研究会が、旧優生保護法(1948~96年)と女性運動の関わりについて、8月に出した冊子「福岡 女たちの戦後第4号」で特集している。中絶手術を認め、女性の生き方を解放した同法を守ろうとする運動は、図らずも、障害者に強制的に不妊手術を施す「優生政策」を温存させることにつながった。そのジレンマを、当時運動に参加した女性たちが振り返っている。

 旧法は70年代と80年代の2回、保守派の求めで政府が中絶を原則禁止にする改正案を提出する動きを見せたため、全国の女性団体が「産む産まないを決めるのは女性の権利だ」と反対。福岡でも集会やデモなどをした。ただ一方で、旧法には<不良な子孫の出生防止>を理由に障害者に不妊手術を強制できる条項があり、障害者団体が「障害者は殺してもいいと言うのか」と女性団体を批判した。結局、法改正されず、96年まで条項は残り続けた。

 冊子では、福岡の女性4人の座談会を特集。当時、障害者と交流会を重ねたが、なかなか歩み寄れなかったという。障害者が手術を受けさせられているとも聞いたが「突き詰めて掘り下げて自分たちの問題として考え続けることはできなかった」と悔やんでいる。

 また昨秋に開いたジェンダー研究者、荻野美穂さんの講演録も収載。九州大の学生らも巻き込んだ70年代の運動に、証言と資料から迫った寄稿もある。

 昨年1月以降、障害者らが相次いで提訴したのを知り、特集を決めた。自身も80年代の運動に関わった研究会主宰の佐藤瑞枝さん(62)は「同じ人権を守る運動で、本来共闘できるはずだったのに、結果的に放置してしまった。出産の奨励や出生前診断の広がりなど、今も『量と質』が国家管理されかねない状況がある。過去の教訓から学んでほしい」と話す。

 冊子は500円。ファクス=092(791)3318=か電話=090(2962)5552=で申し込む。 (下崎千加)

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