再審の不備 異議あり 法改正求め決議 日弁連・人権大会リポート(1)

西日本新聞

 全国から弁護士が集い、人権に関わる諸課題を話し合う日本弁護士連合会の第62回人権擁護大会が3、4の両日、徳島市であった。約800人が参加した全体会合では、冤罪(えんざい)被害者の一刻も早い救済に向けた「再審法の速やかな改正を求める決議」など3案が採択された。第3分科会を中心に進められた再審法(刑事訴訟法の再審に関する規定)改正への議論を詳報する。

 「捜査機関が持つ証拠の開示に関する裁判所の対応の違いで、再審開始が認められたり、逆に退けられたりする格差が生じている」「再審請求審における証拠開示の法制化が急務だ」。第3分科会で、パネリストの弁護士や刑事法学者らが口々に訴えた。

 訴え半世紀なお反発

 冤罪は公権力による深刻な人権侵害であり、再審請求審での証拠開示は日弁連にとって長年の課題。1962年の定期大会で再審制度改正に関する決議を採択して以降、繰り返し法改正を求めてきた。

 通常審では裁判員裁判の開始に伴い、一定の証拠開示が進んだが、再審開始を認めるかどうかを審理する再審請求審での証拠開示は「進化」から取り残されている。2016年改正の刑事訴訟法では、再審請求審での証拠開示の法制化については付則に「政府は速やかに検討を行う」と記されるにとどまった。

 背景には裁判所側や検察の根強い反対、慎重姿勢がある。16年改正を審議した法制審議会(法相の諮問機関)特別部会で民間委員を務めた映画監督の周防正行さんは、東京高裁判事(当時)の委員が「再審請求審における証拠開示に一般的なルールを見いだそうとしても非常に困難」と発言したことを紹介。元検事の市川寛弁護士(第二東京)は検察側の思惑について「クロをシロと言い、被告に有利な証拠の価値を大げさに主張するのが弁護士だという認識がある。裁判所もたぶらかされかねないので証拠は見せられない、という理屈になる」と説明した。

 一方、裁判所の積極的な訴訟指揮(捜査機関への開示勧告など)によって警察や検察に埋もれていた無罪方向の証拠が開示され、再審開始や再審無罪につながる事件が10年以降、相次いでいる。布川事件、東京電力女性社員殺害事件、松橋事件では再審請求後や準備段階で開示された証拠が再審無罪の決め手になった。

 相次ぐ無罪「今しか」

 「証拠開示の制度化」とともに、今回の日弁連決議が2本柱と位置付けたのが「再審開始決定に対する検察官の不服申し立て(抗告)の禁止」だ。湖東事件の杉本周平弁護士(滋賀)は「再審は冤罪被害者救済のための最終手段。長い歳月の末に開始決定を得ても、検察官抗告を認めれば、高いハードルを越えた請求人にさらなる負担を強いることになる」と強調した。

 度重なる検察官抗告で、名張事件は46年、袴田事件は38年、大崎事件は24年、日野町事件は18年にわたって再審請求が続く。いずれも少なくとも1度は再審開始決定が出ている。名張と日野町の両事件では、元被告は、名誉回復の機会も得られないまま亡くなった。龍谷大法学部の斎藤司教授は「日本の刑事司法のモデルとされるドイツでは、検察官の不服申し立てが1964年に禁じられた。再審開始決定が出たら、再審公判で決着をつければいい」と語る。

 根強い抵抗を抑え、どう法改正を実現するか。弁護士でもある伊藤孝江参院議員(公明)は「国会で、超党派で取り組まなければならない問題。まずは再審の問題点を国会議員が学ぶことが出発点になる」。杉本弁護士は「相次ぐ再審無罪で国民の関心は高まっている。改正の必要性を訴え、実現につなげるには今しかない」と力説した。

 

【白鳥決定】札幌市で1952年、白鳥一雄警部が射殺された事件の再審請求を巡り、最高裁が75年5月に出した決定。再審請求の段階でも、新証拠と他の全証拠を総合的に評価して「疑わしきは(合理的な疑いが生じれば)被告の利益に」という刑事裁判の原則が適用されるという判断枠組みを示した。「開かずの扉」と評された再審開始のハードルが下がり、財田川、免田、松山各事件で死刑が確定した3人の再審開始決定が79年6~12月に相次いだ。

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