きょうは67回目の「晩翠(ばんすい)忌」…

西日本新聞 オピニオン面

 きょうは67回目の「晩翠(ばんすい)忌」。宮城県出身の詩人、土井晩翠の命日である。九州の人には、大分県竹田市ゆかりの名曲「荒城の月」の作詞者、と言えば親近感が湧くだろう

▼晩翠は日本に新体詩が生まれた明治時代、ロマン主義の島崎藤村と人気を二分した詩人。七五調の格調高い詩風が持ち味だ。春高楼の花の宴 めぐる盃(さかずき)かげさして-。と口ずさめば、語感の美しさが実感できよう

▼代表作の「星落秋風五丈原」は三国志に題材を取った叙事詩。名軍師で、為政者としても名高かった諸葛孔明の生涯と陣中での悲愴(ひそう)な最期を詠んだ。<丞相(じょうしょう)(孔明のこと)病(やまい)あつかりき>の反復が読み手の涙をそそる

▼天上の晩翠も、故郷・東北の惨状には涙を禁じ得ないのでは。台風19号による記録的な大雨で、宮城など7県の河川堤防が100カ所以上で決壊。80に迫る命が奪われた。東日本大震災の津波で夫を亡くし、再建した家が今度は洪水被害に遭った女性も報じられた。お気の毒で慰める言葉もない

▼それなのに、自民党幹事長からこんな発言が。「予測に比べると(被害は)まずまずに収まったという感じだ」。撤回したがそれで済むものではない

▼「星落…」で晩翠はこう記す。<四海の波瀾(はらん)収まらで 民は苦(くるし)み天は泣き いつかは見なん太平の 心のどけき春の夢>。この国を治める人々が心を寄せるべき相手は、民である。孔明ならそう断言するはずだ。

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