即位の恩赦 民主主義にはなじまない

西日本新聞 オピニオン面

 民主主義になじまない制度をいつまで続けるのか。政府の姿勢に強い疑問を禁じ得ない。

 政府はきのうの閣議で、天皇陛下の即位に伴う「即位礼正殿の儀」に合わせ、政令恩赦を実施すると決めた。国の慶弔に伴う恩赦は1993年の天皇陛下と皇后さまのご結婚以来、26年ぶりとなる。

 恩赦とは、行政権によって、裁判で確定した刑罰を消滅させたり、軽減したりする制度だ。旧憲法では天皇の大権とされ、現行憲法では内閣が決定し天皇が認証すると規定している。

 今回は罰金刑で納付から3年以上経過した人に限り、制限されている資格を一律に回復する「復権令」を22日に公布する。対象者は約55万人で、罪種別では道交法が最も多く、全体の約3分の2を占めるという。

 河井克行法相は「改善更生の意欲を高め、社会復帰を促進する刑事政策的な見地から実施する」と説明した。同時に「さまざまな意見があるのは承知しているが、理解をいただきたい」とも述べた。後段は今回の恩赦に対する国民の疑問や批判が多い点を意識した発言だろう。

 いったん司法の場で確定した刑罰を行政権で軽減・免除する恩赦は、三権分立の原則に抵触するという意見が元々根強い。

 法相の言う「刑事政策的な見地」も一理あるが、他方で犯罪被害者救済を重視する近年の各種制度改革の流れに照らせば、複雑な思いを抱く国民も少なくないはずだ。今回は懲役刑や禁錮刑になった人は対象外だが、過失運転致死傷や暴行・傷害、窃盗などの罪種は含まれる。

 恩赦には本人の出願などに基づき個別に審査する「常時恩赦」がある。刑事政策的な効果を期するなら、こうした制度をもっと有効に活用してはどうか。

 何よりも疑問なのは、事前に十分な情報公開も国民的議論もなく、ある日突然、政府が閣議で決める手法だ。国民主権を憲法で宣言する民主主義の国で温存すべき制度とは思えない。

 私たちは社説で「即位の恩赦」について「前例踏襲せずに見送りを」と主張してきた。政府は今回、罰金刑の「復権」に限定し、規模も大幅に縮小することで国民感情に配慮したつもりかもしれないが、それで国民の理解が深まると判断したとすれば短慮と言わざるを得ない。

 共同通信社が今月5、6両日に実施した世論調査によれば、22日の即位礼正殿の儀に合わせて政府が実施する予定の恩赦について「反対」は60・2%に及び、「賛成」の24・8%に大差をつけた。

 多くの国民の反対を押し切って実施する恩赦にどれほどの意味や価値があるのだろう。

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