九大で原爆児童文学研究 山伏姿で祈る宝満山登山 イタリア人 ロベルタ・ティベリさん

西日本新聞 ふくおか都市圏版 大西 直人

 十数人の山伏の中に1人、細身の外国人女性が交じっていた。福岡県の宝満山(829メートル)は古来、修験道が盛んで「祈りの山」とも呼ばれる。女性は山頂に向かう間、ほこらなどがあるたびに手を合わせていた。何を感じ、どこに心を寄せたのだろう。

 宝満山の歴史に関心のある僧侶や研究者などでつくる「宝満山修験会」が毎年5月、一般登山者とともに山の神に祈りながら山を巡る「峰入り」がある。僧侶たちと同様に山伏姿のロベルタ・ティベリさん(41)は今年、イタリアから4年ぶりに参加した。

 宝満山登山は6回目になる。出合いは九州大の大学院生時代。最初に住んだ福岡市南区に、修験会に加わる藤野賢隆(けんりゅう)さん(71)が住職の本行院があった。満開のサクラに誘われて立ち寄った本行院で、宝満山の峰入りがあることを知り、興味を持った。

 ベネチア大では日本語専攻。「山伏の格好をして登りたい」と願い出ると「最低でもお経が唱えられるようになったら来なさい」と課題を与えられたが、あっという間に覚えて藤野さんを驚かせた。

 宝満山では「心の中で神様と会話できる」という。何を話すのか。「本当の自分がさらけ出せて、いろいろなことが整理できる。神様はいつも私を見守ってくれることも分かる」。宗教を超えて素直になれるということか。

 2007年から3年間留学した九州大では、比較社会文化研究院で原爆児童文学を研究した。各地の研究者などでつくる「原爆文学研究会」にも参加。広島在住の作家、大野充子さんの「八月の少女たち ヒロシマ・1945」などを研究対象にした。

 原爆児童文学には「核兵器、戦争、平和など地球規模の問題を子どもたちに認識させるだけでなく、現実に直面する課題にも積極的態度で臨むことを促す」という意義があると感じる。「原爆の異常な体験を描く中で普遍的な人間性も探っている」ことにも興味があるという。

 イタリア・ボローニャ市在住。仕事は翻訳業で、日本の人気アニメ100冊以上を紹介した。大ヒットした劇場版「この世界の片隅に」(片淵須直監督)については「時代の流れの中で原爆の描き方が変化している。こうの史代さんの原作も読みたい」と話す。

 イタリア人の夫との間に5歳と2歳の2女。子育ても忙しい。原爆児童文学への関心は持ち続けており、今回も多くの図書を購入して帰った。藤野さんが付けた法名は「妙天(みょうてん)」。物事を極める女性という意味だ。原爆児童文学の研究も極めたい。山伏の装束やホラ貝は自前。「イタリア出国時の空港で、ホラ貝が随分と怪しまれた」と笑った。 (大西直人)

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