太宰府に古民家ホテル 「令和の里」に九州初の分散型 古材生かし、時の流れ演出

西日本新聞 もっと九州面 南里 義則

 九州初の古民家を活用した分散型ホテルが4日、福岡県太宰府市で開業した。学問の神様・菅原道真公をまつる太宰府天満宮を訪れる観光客は多いものの、滞在時間の短さや消費の少なさが課題だった同市。元号「令和」ゆかりの地として同天満宮以外の観光スポットも生まれており、地元では「周遊観光定着への追い風に」との期待が高まるばかりだ。

 「まさか、ここまでやるとは思わなかった」。分散型ホテル「カルティア太宰府」の拠点棟「古香庵(ここうあん)」(4室、レストラン50席)の家主、吉嗣文成(ふみしげ)さん(73)は内覧会で目を丸くして言った。視線の先にはレストランの壁の、所々むき出しの古い土壁。数字を墨書した古い板も使われている。

 見上げると、天井には約100年前の太い梁(はり)。「訪問客に喜んでもらい、次代に残していく。建物を受け継いだ者としてありがたい限り」と吉嗣さんは言う。

 来春には、近くにさらに2棟(計9室)の古民家ホテルがオープンする予定だ。そのフロント機能を古香庵が果たす。エリア全体をホテルに見立てるのが、分散型ホテルの特徴である。

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 開業前の9月30日、古香庵であったオープニングセレモニーでは、出席者から「太宰府観光が、通過型から滞在型に転換する起爆剤になってほしい」と切望するあいさつが相次いだ。

 出席したのは、事業主体の会社に共同出資した西日本鉄道や福岡銀行などの関係者。ホテルの運営を委託された「バリューマネジメント」(大阪市)の他力野淳社長(46)は「まちを守りながら運営し、太宰府を感じていただくのが私どもの仕事」とあいさつした。

 同社は成功事例を持つ。2015年、分散型ホテルの先駆けとして兵庫県・篠山城跡(国史跡)周辺の古民家で開業した「篠山城下町ホテルNIPPONIA(ニッポニア)」だ。その成功が1室でも宿泊施設を営業できる法改正に結びついた。他力野社長は「太宰府の朝と夜を味わえるコンテンツの充実と、魅力発信が成否の鍵」と強調する。

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 「雰囲気がとても良く、心身ともにきれいになれた気がした」。古香庵に宿泊した関西の40代女性客は、そう感想を述べたという。

 女性はその朝、隣の太宰府天満宮でホテルが用意した体験プログラム「朝拝(ちょうはい)」に参列した。太宰府の深い歴史・文化を体感する場として、天満宮や九州国立博物館なども協力している。

 この界隈(かいわい)では、古民家を生かしたカフェの開店やアンテナショップなどを目指す動きが続いている。マンションを改装した「ソニックアパートメントホテル」(8室)も5月、営業を始めた。経営者は地元の美容店主。宿泊料1人3万円以上(朝夕食付き)のカルティアに対し、同6千円(食事なし)からとお手頃だ。

 4月以降の令和効果で大宰府政庁跡周辺への観光客も依然、多い。政庁跡北を通って、東の天満宮エリアと結ぶ「歴史の散歩道」付近の古民家で、おもてなしカフェはできないか。そんな夢を追う市民も現れた。

 太宰府観光に大きな変化の波が押し寄せている。 (南里義則)

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