俳優たちのドキュメンタリーです 映画「スペシャルアクターズ」監督 上田慎一郎さん

西日本新聞 根井 輝雄

 昨年大ヒットした映画「カメラを止めるな!」。驚くようなどんでん返しが大きな話題を呼びました。その上田慎一郎監督(35)の新作「スペシャルアクターズ」が公開されています。前作と同じように、無名の俳優たちと一緒に作り上げた娯楽作品。上田監督に、新作への思いを尋ねました。

 -「スペシャルアクターズ」は“俳優”の物語です。製作はどのような経緯で?

 ★上田 今回は「松竹ブロードキャスティング」のプロジェクトです。「作家主義」「俳優発掘」を掲げていて、ワークショップで作品を作っていきました。「カメラを止めるな!」に近い製作スタイルですね。前作の公開前にオファーをいただき、俳優をオーディションして、約1500通の応募から15人を選びました。

 普通は先に物語があって、役に合わせて俳優を集めるんですが、今回はまず俳優を選んで、それぞれに合った物語を書くことに挑戦したいな、と考えました。大手のメジャー映画と違うものを作りたい、という思いもあったので。それで、俳優たちも交えた企画会議を僕から提案し、彼らの意見も採り入れています。

 -作品は、緊張すると気絶してしまう、売れない役者が主人公です。

 ★上田 主演の大澤数人さんは芸歴経験が浅く、10年間で役者をやったのが3本しかない。その彼を主役に据えたんですが、猛烈な緊張とプレッシャーで、本当に気絶しそうな中で現場に臨んでいました。だから、役柄とはいえ、緊張して演じているので、彼の闘いのドキュメントでもあります。

 自分も「カメラを止めるな!」の次、というプレッシャーがのしかかってきて、今まで味わったことのないスランプに陥ったんです。全く書けなくなって。僕自身も気絶しそうだったので、それを脚本に取り込みました。でも、そのとき1人じゃなく、俳優も15人いたし、仲間に支えられて何とか最後までできた作品です。

 -ストーリーは、俳優事務所「スペシャルアクターズ」のメンバーが、カルト宗教団体と戦います。

 ★上田 カルト教団は、実は詐欺師集団なんですが、その世界観をつくるのに苦労しましたね。教祖がいて、信者があいさつのポーズをとるんですが、リアルにしすぎると社会派映画になるし、あまりばかばかしすぎるとチープだし。こんな集団はいないだろう、でも、もしかしたらいるかも…と思わせるようにしました。

 -主人公は、ヒーロー映画に憧れています。

 ★上田 今回は、スパイ映画やヒーロー映画など、自分が好きなジャンルを盛り込んでいます。映画のおもちゃ箱をひっくり返したような醍醐味にあふれた作品になったと思っています。いろんな遊び心や細かな設定も盛り込んでますので、何回見ても発見があるはずです。

 -撮影はストーリー順だったそうですね。

 ★上田 ええ。順番に撮ったので、主人公をはじめ俳優たちの成長が映っているんですよ。だんだん芝居が良くなってくる。生身の俳優たちによる闘いの記録です。現場のライブ感や熱量を感じていただければ。その意味でも、フィクションと同時にドキュメンタリーでもあります。今の自分と、このメンバーでしか作れない、特別な一本です。

 精神科医を演じた原野拓巳さんは福岡県出身。彼はムードメーカーで、チーム全体を底上げしてくれました。この作品は、俳優たちの青春群像劇でもあるので、お気に入りのキャラクターを探してもらえれば、と思います。

 -ところで、福岡にはよく来ますか。

 ★上田 「福岡インディペンデント映画祭」で受賞したときに来まして、昨年は「カメラを止めるな!」のキャンペーンで訪れました。福岡は、いつ来ても活気がある印象ですね。

 (文と写真・根井輝雄)

 ▲うえだ・しんいちろう 1984年4月7日生まれ、滋賀県出身。中学生の頃から自主映画を作り、高校卒業後も独学で映画を学ぶ。2009年、映画製作団体「PANPOKOPINA(パンポコピーナ)」を結成。15年、オムニバス映画「4/猫」の1編の監督で商業デビュー。18年劇場公開の「カメラを止めるな!」は当初2館のみの上映だったが、口コミで人気が拡大し、全国353館で上映され、動員数220万人以上の大ヒットになった。

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