進次郎氏ってどうなの?

西日本新聞 オピニオン面

 今、東京の政治記者が故郷の実家に帰ったとする。必ずや親類や近所の人々にこう聞かれるだろう。

 「進次郎さんって、実際どうなの?」

 9月の内閣改造で環境相に抜てきされた小泉進次郎氏(38)。小泉純一郎元首相の次男として注目を集め、将来の首相候補に名前を挙げられる人気政治家だ。

 一方、環境相就任後の「気候変動問題への取り組みはセクシーに」などの発言が「意味不明」との批判が集中。週刊誌には「メッキのはがれ方がすごすぎる」の見出しも躍る。

 で、実際どうなのか?

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 現場の政治担当記者に「どうなの」と聞くと、評価は厳しい。「言葉は多いが内容は乏しい」というのは、すでに政治記者の間で定評だったというのだ。

 これまでに取り組んだ農政改革や国会改革についても、関係者の間では「中途半端」との声が根強い。

 それがなぜ「首相候補」とされるのか。現場の記者は「テレビが、絵になる進次郎氏がコメントする映像を流し続けるうちに、そんな空気が出来上がった」と釈然としない表情で語る。

 現時点で「人気先行」は明らかで、実行力を試されるのはこれから、ということだろう。ただし、民主主義が選挙制度を基盤としている以上、人気というものが政治家の実力の一部であるのもまた否定できない。

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 研究者はどう見るか。

 気鋭の政治学者、中島岳志東京工業大教授の新著「自民党 価値とリスクのマトリクス」(スタンド・ブックス刊)は、自民党の首相候補と呼ばれる人々の政治的な立ち位置を、その人たち自身の著作や発言から分析した労作だ。

 中島教授は政治家たちの特徴を「リスクの社会化か個人化か」の縦軸、「価値観がリベラルかパターナル(父権主義)か」の横軸で位置付ける。私なりにややおおざっぱに言い換えれば、リスクは「公的扶助か自己責任か」、価値観は「多様化を認めるか、伝統重視か」ということだろう。

 中島教授の分析では、進次郎氏は「競争原理を重視し、自助努力を強調」する発言が目立っており「リスクの個人化(自己責任派)」の傾向が強くうかがえる。一方で価値観の問題については「ほとんど言及がなく、立場を鮮明にしていない」としている。

 首相候補として歩むなら、そろそろ価値観についてきちんと表明すべきだろう。中島教授は「自らの総合的ビジョンを整理し、本を書いてみるべきではないか」と進次郎氏に勧めている。全く同感である。

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 私が考え込んでしまうのは、確実な実績もない30代の政治家が、人気首相の2世という優位性と、「発信力」とかいうよく分からない能力だけで「将来の首相候補」と位置付けられる-それ自体が自民党の深刻な人材不足を物語っているのではないか、という点だ。

 一方で政治報道の責任も痛感する。目立つ政治家を持ち上げたり落としたりして、ワイドショーのネタのように消費するよりは、地味でも良い仕事をしている政治家を見つけ出して世間に知らせる方が生産的だ。

 地に足の着いた政治報道を取り戻したい。「実際どうなの?」の答えになっていないのは心苦しいが。

 (特別論説委員)

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