公立病院再編 地域事情踏まえた議論を

西日本新聞 オピニオン面

 厚生労働省が再編・統合の議論が必要と判断した424の公立・公的病院を公表し、波紋を広げている。地域医療の現場から反発の声が出ているからだ。

 全国的に人口当たりの病床数が多く、これが不必要な入院や長期療養を招き、医療費を押し上げているという指摘がある。国の財政が逼迫(ひっぱく)する中、効率的に医療資源を再配置し、高齢化で膨らむ医療費を抑制することに、異論はない。問題はその進め方だろう。

 厚労省が今回判断に用いたのは、がんや救急など9項目の診療実績と、近隣に競合病院があるかというデータである。

 厚労省がいう再編・統合には病床数を減らすといった対応も含まれる。強制はしないというが、単純なデータで機械的に病院を評価し、再編を促すやり方はやや乱暴ではないか。

 公立・公的病院は長年、民間病院が少ないへき地や離島に医療を提供してきた。各病院の特性や果たしてきた役割を無視するかのような再編論議は、地域の理解を得られまい。実際、各地で「統廃合されたら通院が大変になる」「地域の安心感がなくなる」といった声が広がる。

 九州7県では計50病院の名が挙がっている。福岡県が最多の13で、筑豊・北九州地域に集中している。公共交通機関が少ない地域の病院もある。脊髄損傷治療をリードしてきた総合せき損センター(福岡県飯塚市)なども含まれる。

 厚労省が17日に福岡市で開いた説明会では、九州各地の病院関係者から「地域の実情を踏まえていない」という批判が相次ぎ、公表撤回を求める意見も出た。厚労省は現場の不安と戸惑いを重く受け止めてほしい。

 人口減と高齢化の進展をにらみ、医療費がかさむ急性期病床を減らして、リハビリ向けの病床を増やす。並行して在宅医療を普及させ、全国の病床数を削減する-。こうした厚労省が描く将来設計を踏まえ、都道府県は2025年に必要な医療体制を「地域医療構想」として策定し、行政や医療の関係者が地域医療構想調整会議で医療体制の再編を協議してきた。

 確かに、公立・公的病院の急性期病床の削減が進まない現状に問題はある。深刻な医師不足や人口減に直面し、赤字経営に苦しむ公立・公的病院も少なくない。それでも、地域医療の再編にはやはり民間病院も含めた総合的な検討が不可欠だ。

 各地の調整会議を中心に丁寧に議論を重ね、質の高い医療を持続的に提供できる体制を構築すべきである。民間病院の診療実績などの情報を適宜提供し、地域の議論を後押しする。それこそ厚労省の役割だろう。

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