地域と観光客の関係構築を 千相哲氏

西日本新聞 オピニオン面

◆オーバーツーリズム

 最近オーバーツーリズムによる弊害が多くの地域で指摘され、社会問題化している。観光公害とも言われるこの問題は、特定の地域に許容範囲以上に押し寄せた観光客がもたらす、負の影響のことである。住民の日常生活に支障をきたすほどの交通渋滞や街中の混雑が生じ、日本文化への無理解からごみのポイ捨て、立ち入り禁止区域への侵入や落書き、居住地域で騒ぐなどの現象が見られる。

 訪日外国人旅行者が大きく増え始めたのは2013年に1千万人を突破してからであるが、18年には3100万人を超え、5年間で3倍増となった。四大マーケット(中国、韓国、台湾、香港)以外に経済発展を続けている東南アジアからの旅行者も大きく増え、同期間に138万人から387万人に伸びており、観光のグローバル化がますます進んでいる。さらに、訪日外国人旅行者の平均リピーター率は60%以上にのぼるが、会員制交流サイト(SNS)により観光情報が瞬時に収集できるようになったため、“より物珍しい”“インスタ映えする”場所を求めて地方へ周遊する旅行者が急増した。これまで観光地ではなかった地域にまで地域に与える影響に無関心な観光客が突然押し寄せ、住民たちは平穏な暮らしの営みを壊され、その結果、観光客に対するイメージが悪化し、さらに観光客の受け入れを巡って住民との間で、軋轢(あつれき)が生じるようになるなど、問題が複雑化している。

 オーバーツーリズムは世界中の有名な観光地で見られるが、日本でもその対策として、白川郷(岐阜県白川村)ではライトアップイベントへの完全予約制を導入し、京都市では観光地への移動手段を分散化することで、道路渋滞の緩和を図っている。訪日外国人観光客の増加がもたらす経済的効果は大きいが、一方で社会問題化している軋轢の状況から問題の本質を把握し、一定の規制を導入するなど、観光公害の発生に備えることが重要である。観光公害対策として、地域の観光客受け入れの適正規模を検討するとともに、地域住民の声を聞き取り、観光事業者・関係者、地域住民を含めた合意形成に努めるべきである。地域の自然や文化を守りながら、地域住民が安心してそこに暮らし続け、同時に観光客が期待通りの観光ができるように両者の関係性の構築に向けた取り組みを急ぐ必要がある。

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 千相哲(せん・そうてつ)九州産業大共創学部長 1959年生まれ、韓国・ソウル市出身。立教大大学院修了(社会学博士)。専攻は観光学。国際観光の振興や、観光まちづくりに関する研究と教育に取り組む。

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