京築ヒノキ、商品化続々 名刺入れやトレー、ベンチ… 大学生の感性生かす

西日本新聞 北九州版 石黒 雅史

 京築ヒノキの需要拡大に向け若者目線で新商品開発に取り組む産学官の「京築のヒノキと暮らすプロジェクト(ちくらす)」が商品化の段階を迎えている。学生のアイデアで開発した京築ヒノキ製の名刺入れは年内にも発売予定。トレーは年度内に市販、ベンチは来年度に実用化する方針だ。さらに平成筑豊鉄道(福智町)の駅待合室を京築ヒノキで改装する取り組みも始まり、地元木材の売り込みが本格化している。

◆京築はヒノキ7割

 スギとヒノキを比較すると県内の森林はスギが多い。県行橋農林事務所によると県平均はスギ55%でヒノキ45%。だが京築地方はスギ30%、ヒノキ70%と逆転する。岩場が多く土地がやせており、スギには適さないためという。

 国内林業は安価な輸入木材に押され、長らく低迷している。ただ全国の木材自給率は2002年の18・8%を底に18年は36・6%までに回復。最大の要因は国内人工林の約7割が伐採適齢以上になっていることだ。今切らないと老いていくだけでなく次世代に供給するための木を植えられない。このため京築だけでなく全国の関係者が国産材活用に力を入れている。

◆若者のアイデアを

 こうした事情を背景に「ちくらす」が始動したのは2015年。京築の2市5町や農林事務所、森林組合などでつくる京築地区森林・林業推進協議会は西日本工業大(苅田町)や西南女学院大(小倉北区)と連携。西南女の学生が市場調査をして新商品のテーマを設定、西工大生が試作品を提出しコンペ方式で最優秀作(商品化候補)を選ぶ。その案を基に、工芸作家の力も借りて商品化していく仕組みだ。

 これまでに6回の合同コンペを開き、名刺入れ、ノートカバー、トレー、椅子などの最優秀作が選ばれた。西工大の学生を指導するデザイン学部の石垣充(たかし)教授(50)は「女子大生が厳しい目で審査して選んだ作品」と、若者と女性の感覚に自信をみせる。

 中でも名刺入れは昨春と今春の2回、イタリアの世界的祭典「ミラノデザインウイーク」に出展。2枚の板をスライドさせて開閉するしゃれたデザインとヒノキの香りが好評で、会場で知り合った和歌山県の伝統工芸士・東(あづま)福太郎さんから「作るならうちで」と誘いを受けた。

 「これで商品化への自信が持てた」と農林事務所林業振興課の佐藤庸一係長(55)。生産は東さん経営の家具製造会社が担い、販売も北九州市の大型店が引き受けることが固まり、あとは価格設定などの詰めが残るだけだ。

◆無人駅を無償改装

 京築ヒノキの魅力を幅広くPRしようと「ちくらす」は、平筑鉄道の駅にも進出し始めている。

 今年8月に開業した令和コスタ行橋駅に、京築ヒノキの手すりやベンチが使われたのを機に、ちくらす側が「木質の駅をもっとふやしては」と提案、平筑鉄道が応じた。手始めに、無人の東犀川三四郎駅(みやこ町)の待合室をちくらす側が無償で改装することになった。

 19日、石垣教授やゼミの学生らが現地に赴き、老朽化した待合室の壁のベニヤ板を撤去。鉄骨や金属屋根などは残し、内側をヒノキのタイル、外側を焼きスギで覆う計画。ヒノキ素材のベンチも設ける。来月上旬に完成の見込みだ。

 ちくらす側はさらに老朽化した近隣の駅にも、京築ヒノキなどによる木質化を広げたい考え。大勢の人の目に触れる駅で京築ヒノキの魅力を発信し、新たな需要の発掘につなげることを狙う作戦だ。 (石黒雅史)

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