【広告とジェンダー】 松田 美幸さん

西日本新聞 オピニオン面

◆選択肢狭めない創造を

 今月11日は「国際ガールズデー」だった。世界中の女の子や若い女性たちが直面する問題に取り組むことを訴える日として、2011年に国際連合が採択した。

 児童婚や若年労働を強いられて教育の機会を奪われるとか、暴力の被害に遭うといった性別に基づく不平等を撲滅するために、国際NGO(非政府組織)のプラン・インターナショナルが立ち上げた「私は女の子だから」と題した活動がきっかけになった。

 この団体は毎年、国際ガールズデーに合わせ、世界的な啓発活動を行う。今年は「映画や広告でのジェンダー(社会的性差)の描かれ方」がテーマ。日本でも、映画や広告が人々のジェンダーへの固定観念にどう影響しているかを若者が調査分析し、企業や関係団体に提言を行った。

 調査には15~24歳の392人(女性84・2%)が回答した。「よい意味で印象に残った広告がある」は30・2%だったのに対し、「不快感を感じた広告がある」は41・8%。不快感や違和感を持った理由として最も多かったのは、「ジェンダーの固定観念の助長」だった。女性を性的対象とした描写、性別役割分担や画一化した容姿の押し付け、LGBT(性的少数者)への配慮不足など、実際に広告表現が問題となり炎上した事例の要因とも重なるようだ。

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 今年の6月、英国の広告基準協議会は、「深刻もしくは広範な被害」につながる可能性のある「性別に基づく有害なステレオタイプ(世間的固定観念)」を使った広告を禁止した。

 禁止事項には、性別から連想される職業や役割、特徴、行動の描写▽ステレオタイプに合致しない人へのからかい▽性的対象としての描写▽体の「モノ化」▽体に対する固定的なイメージをかきたてるような描写-などが対象基準に挙げられている。

 この基準で日本の広告を評価すると、どうなるだろう。分かりやすい固定観念を使って表現するような広告は、創造性の欠如を自らさらけ出すことにならないか。

 毎年、フランスで開催されている世界最大級の広告賞・カンヌライオンズで受賞する作品は、社会の固定観念を変えることに挑戦し、人々の行動変容を促す役割を果たすものが多い。創造性を駆使することで、見る人をはっとさせ、無意識の思い込みに切り込んでいく。今年の日本からの出品作品は、これまでになく低迷したと聞いている。

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 オランダのビール会社ハイネケンの広告は、ジェンダーや環境問題について対立する考えを持った市民同士が共同作業を通じて対話し、最後にはビールを酌み交わすという社会実験を作品に仕上げ、多様性を認め合う難しさと可能性を訴えて話題になった。

 女性に対する暴力をなくすため、男性に働きかける活動に取り組むカナダのNPOは、「男の子は泣くな」という広告で注目された。生まれた時から「男は強くなれ」としつこく聞かされた男性が、他人に暴力を振るう人生へと落ちていく作品だ。

 長い時間をかけて無意識に刷り込まれた固定観念は、子どもも大人も人生の選択肢を狭め、異なる立場の人との分断をもたらしかねない。安易な手法の広告で人々の選択肢を狭めるのか、広告を通じて社会の課題解決を支援する企業になるのかが問われる。

 11月19日は「国際男性デー」である。日本では認知度が低いが、男性や男の子への差別に注目するとともに、社会や自身の固定的なあるべき男性像にとらわれず、自分らしい選択ができることを目指す取り組みだ。男性の視点からの課題解決に向けても、広告が果たす役割に期待したい。

 【略歴】1958年、津市生まれ。三重大教育学部卒、米イリノイ大経営学修士(MBA)。2017年12月から現職。福岡県男女共同参画センター「あすばる」の前センター長。内閣府男女共同参画会議議員、内閣府少子化克服戦略会議委員。

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