支え輝いた19日間 片言で観客誘導、ユニホーム完売 ラグビーW杯
ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で、県内で予定された5試合が終わった。大会を支えた多くのボランティアや観光関係者らは「一生に一度」を堪能。それぞれに光り輝いた19日間を振り返る。
試合会場の昭和電工ドーム大分(大分市)で観客を誘導した同市の会社員、神田肇さん(49)は「外国の人との触れ合いが楽しかった」。片言の英語とジェスチャーにもかかわらず、外国人客は感謝の言葉をかけてくれた。「大きなトラブルもなくほっとした。けど、お祭りが終わった感じで寂しさがありますね」
ドームでビールを販売した同市の大学生、菊池由莉菜さん(21)は「一生分のビールを売りました」と声を弾ませた。うまく英語は話せなかったが「ゆっくり話してくれたり、何回も言ってくれたりしてくれた」。フード売り場で働いた同市の短大生、加藤真侑さん(18)は「今後も外国人と交流したい」と目を輝かせた。
連日、大勢でにぎわったファンゾーンやパブリックビューイング(PV)。同市の「祝祭の広場」で関連グッズを販売した「スポーツリーグ」は各国のユニホームが仕入れ直後に完売。工藤亨代表(59)は「最初はラグビー経験者の男性が主だったが、徐々に女性の購入者も増えた」という。
近くの赤レンガ館内の県産加工品販売店「オオイタメイド」では、温泉成分の入った化粧品など大分ならではの商品が売れた。社長の佐藤徹一さん(53)「お土産の習慣のない欧米人は大量に買い込むことがなく、売り上げは若干良かった程度」と苦笑い。
JR日田駅前で13日に催された日本戦のPVには約700人が集結。企画した「日田ラグビースクール」の河津勇成さん(46)は「学校の休み時間にラグビーで遊ぶ子どもが出てきた」と喜んだ。
強豪国がキャンプを張った別府市。中心街の飲食店のマスター、橋口幸一さん(69)は外国人グループが生ビール53杯を飲んだ日もあるなど「特需でした」。
同市旅館ホテル組合連合会によると、試合日や前日には4千人を超える外国人客が宿泊。「海外のマスコミが別府を発信し、大きなチャンスになった」と堀精治専務理事(67)。険悪な日韓関係も「ノーサイドになり、良好な関係に戻ってほしい」と期待する。
同市の長野恭紘市長は21日の会見で「とてつもない人が街中に出て、『こうなればいいな』と思っていた光景が実現した。欧米オセアニアから多くの人に来てもらい、(アピールの)いいきっかけになった」と力を込めた。
県警によると、試合のあった5日間、県内でW杯関連のトラブルは約100件。交通渋滞は、試合初日こそ最大2・3キロ渋滞したがその後は改善し、県警は「県民や観光客らに感謝します」と話した。(ラグビーW杯取材班)