【動画あり】官邸に立つ“長崎の像” 国の玄関「裸を敬遠?」 彫刻家・富永直樹さん作「新風」

西日本新聞 社会面 川口 安子

 「首相官邸に、なんで『自律の像』があると!?」。9月から安倍晋三首相の日々の動向を追う「総理番」として、東京・永田町で取材するようになって驚いた。官邸内の一番目立つ場所に、私の母校・長崎西高(長崎市)のシンボル「自律の像」と同じ彫刻が屹立(きつりつ)しているのだ。ちょっぴりの誇らしさと懐かしさに駆られ、謎解きをしてみると-。

 風をはらませるように布の両端をつかみ、前を向くブロンズ製の青年像。高さ約2メートル。官邸3階の正面玄関から入ったロビー、通称「エントランス」に立っている。閣僚や与党幹部たちが日常的に出入りし、海外の賓客も迎え入れる“国の玄関”だ。

 どこから見ても、母校の校門そばで私たちを見守ってくれた彫刻と、うり二つ。だが、当時は「自律」の冠言葉しか知らなかった。

 台座に近寄ると、「新風」の作品名が。作者は、富永直樹さん(1913~2006)。長崎市の「平和祈念像」作者の故北村西望から指導を受け、男性の着衣像で注目された郷里を代表する彫刻家だった。

 官邸事務所に尋ねてみた。美術品は、外部から借り受けて定期的に入れ替えている。「新風」は72年に日本芸術院賞を受賞し、同院が買い上げて所蔵。官邸には、2010年9月10日にやって来たという。なぜ「新風」だったのか。担当者は「彫刻は裸像が多い。いろいろな国の方が来る場所なので、服をまとっている『新風』が選ばれたのではないでしょうか」と推測した。

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 ここまで調べたら、出発点だった「自律の像」の由来も知りたくなった。長崎西高の先輩方に助けを求め、28年前に発行された在京同窓会報の中に答えを見つけた。

 発案者は、創立30周年(78年)時に校長だった故林田光晴さん。<(新しく校訓とした)自律を標榜(ひょうぼう)する芸術の香り高い彫像を建立することを思いつきました>。そこで林田さんは同校の前身、旧制長崎中OBでもあった富永さんに、同窓会を通じて「新風」設置を依頼したのだった。

 彫刻作品は原型を基に鋳造するため、どれも本物と言える。「私たち長崎西高生の『誇り』が、官邸にもあるなんて知らなかった」と同窓会の長澤和彦副会長(63)は驚く。長崎県美術館に問い合わせてみたところ、「新風」は他にも同館や大分南高(大分市)など、少なくとも全国計6カ所にあることが判明した。

 大分南高の台座には、富永さんのこんな願いが刻まれている。

 「若者達が世界からの新風を大きく吸収し、成長することを願いつつ」

 官邸の彫刻は近く、エントランス改修工事のため、9年間の役目をいったん終える。11月に憲政史上最長の在職日数に達する安倍首相。「解散風」もいいが、若者の未来に向けて新たな風を吹き込んでほしい。 (川口安子)

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