立野インフラツアーPR 南阿蘇村、大橋やダム建設現場巡る

西日本新聞 熊本版 佐藤 倫之

 熊本地震で大きな被害を受けた南阿蘇村立野峡谷では、大橋やダムなどの建設が進む。その現場を観光客らが巡る「インフラツアー」を売り出す動きが本格化している。村と国土交通省、観光団体など官民が連携し、観光復興につなげる狙い。15日には夜の突貫工事現場を巡る異色の「ナイトツアー」も試行された。

 「カッカッカッ」「ザザー」。2022年度の完成を目指す国営立野ダムの建設現場では、照明に照らされた谷底から時折、そんな工事音が闇に響いた。

 国交省担当者によると、現場では現在、軟弱な岩盤を除去する工事が進む。ダイナマイトで昼間爆破された岩を、夜に細かく砕いてトラックに積み、搬出している音だという。

 20年度の開通を目指す新阿蘇大橋(本体345メートル)の工事現場は、高層ビル群の夜景のようだった。

 V字形の谷の底では、高さ97メートルの最長橋脚の基礎建設が始まっていた。担当者は「工事は谷風との闘い」と話す。安全上、風速10メートル以上となると工事は中止。毎月、3分の1程度の日数しか作業できず、これから冬場はより風が強まる。「橋げたがつながるのは1年後でしょうか」という。

 熊本地震から3年半が過ぎ、一帯の橋やトンネル、道路、鉄路の復旧工事は大詰めを迎えている。

 工場群やダム、発電所などを巡るインフラツアーは、10年ほど前から各地で人気だ。知的好奇心が強い60、70代の団塊世代らを対象に「大人の社会見学ツアー」として売り出された。

 立野峡谷のツアーは、インフラ完成までのプロセスを商品化する試み。既存の温泉や湧水、大自然の魅力に加え、地震の記憶を巡る「震災遺構ツーリズム」とも連動させ、観光客誘致につなげたい考えだ。

 この日のモニターツアーには、阿蘇ジオパークガイドのメンバーも参加。その一人、広瀬顕美さん(71)は「地震、噴火、水害など、この峡谷には人々が自然の猛威や災難を克服してきた歴史が詰まっている。私なりに興味深く語っていきたい」と話した。 (佐藤倫之)

   ◇   ◇

自然保護の視点から現地巡るツアーも

 立野峡谷では20日、ダム建設に反対する市民団体主催のインフラツアーもあり、約50人が15日のツアーと同じコースを巡った。

 案内したのは地元住民団体「阿蘇自然守り隊」の松本久会長(67)ら。松本さんは内科医で2011年、南阿蘇村に移住。熊本地震があった3年前、有志で団体を旗揚げした。「治水対策や復興事業は必要だが、今のやり方で本当にいいのか?」。自然が好きで移住しただけに、そんな疑問が活動の発端となったという。

 立野ダムは一般的な貯水型ではなく、三つの穴で流水量を調整する治水ダム。白川流域では1953、80年、90年、2012年に洪水被害が起きた。市民団体らは「治水対策は必要だが、この構造では流木や土砂が穴をふさぎ、洪水調整機能を果たせるのか」との疑念がぬぐえない。付近に活断層があることも、反対の一因になっている。

 新阿蘇大橋の建設現場では、巨大な「柱状節理」も見られる。溶岩が冷え固まってできる六角柱の火山地形で7層列を形成。数十万年前からの巨大噴火と峡谷の歩みを刻んでいる。

 松本さんは「地球温暖化も絡む近年の風水害を考えると、工事の優先順位や白川流域全体の河川行政の在り方が問われている」と話した。

熊本県の天気予報

PR

熊本 アクセスランキング

PR

注目のテーマ