マラソン札幌へ 選手第一で準備再点検を

西日本新聞 オピニオン面

 そもそも無理のある計画ではなかったか。この際、徹底的な再点検が必要である。

 来年の東京五輪のマラソンと競歩のコースが札幌市に変更される見通しになった。国際オリンピック委員会(IOC)が計画を発表し、大会組織委員会も受け入れる方向だ。開幕まで9カ月という異例の段階ではあるが、選手や観客の健康を考慮すればやむを得ない判断だろう。

 きっかけは今月6日まで中東カタールで開かれた陸上の世界選手権だった。暑さを避けようと深夜に実施したマラソンと競歩で棄権者が続出した。これを受けてIOCのバッハ会長が決断したようだ。同じ光景が東京でも繰り返される懸念は、確かに拭い切れない。

 札幌は8月の平均気温が東京より4度ほど低く、毎年8月に大規模な北海道マラソンを開いている実績もある。変更するレースの実現には、コース設定▽関係者の宿泊施設の確保▽沿道警備やボランティアといった支援態勢の構築▽販売済みチケットの取り扱い▽これらの費用負担をどうするか‐など、課題は山積である。関係者は遅滞なく準備を進めてほしい。

 ここ数年、国内の夏場の猛暑は「異常」と言ってよい。東京五輪の屋外競技、特にマラソンなどは当初から選手の健康への影響が不安視されていた。

 開催都市・東京都はこれまで巨費を投じて、遮熱性舗装や木陰をつくる街路樹整備など暑さ対策に力を入れてきた。加えて直前まで変更論議の「蚊帳の外」に置かれた格好で、納得いかない点も多いだろう。

 各国選手にも戸惑いが広がっているという。東京の暑さを想定し、スピードより持久力を重視した対策、実際のコースに合わせた練習を重ねており、戦略の立て直しも迫られそうだ。

 IOCと組織委に問いたい。なぜ、もっと早く判断できなかったのか。一刻も早く、一連の経緯や今後の手順を詳細に情報公開し、関係者の理解を得られるよう努力すべきである。

 IOCが掲げる「アスリートファースト(選手第一)」の理念に異論を唱える人はないだろう。ならば、コース変更などの配慮が必要な競技はもうないのだろうか。過酷な条件下の競技はトライアスロンなども挙げられる。パラリンピックは大丈夫なのか。選手第一の視点で早急に再点検してほしい。

 今回の一件が改めて突き付けているのが、夏季五輪の開催時期が今のままでよいかという問題だ。IOCの大きな収入源である放映権料を提供する米国テレビ局の意向で左右される現状でよいのか。ここでも「選手第一」が問われている。

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