おしゃべりロボット見守ります 「元気デスカ?」 健康を管理 孤独和らげ 家族に報告

西日本新聞 くらし面 国崎 万智

 家族と離れて暮らす高齢者を見守るロボットが、次々に登場している。センサーやカメラ付きで、家族のスマートフォンに写真やメッセージを送り安心を届ける。人工知能(AI)を搭載しておしゃべりができるタイプも多く、在宅の高齢者の生活リズムを整えたり、孤独感を緩和したりとプラスの効果も表れているようだ。

 「僕も人間のように食べたいけど、お母さんがおいしそうに食べているところを見ているね」。福岡市早良区のマンション。テーブルにちょこんと座るロボット「パペロアイ」が、阿部和美さん(90)に顔を向けて話し掛ける。続いて、北九州市小倉北区に住む長男睦(むつむ)さん(65)がスマホで打った伝言を読み上げた。「今日も張り切っていきましょう。そちらも元気でお過ごしくださいね」

 夫一馬さんが4年前に他界してから、和美さんは誰とも話さない日もざらだった。1年前、身長30センチの“相棒”がやって来た。帰宅時に「ただいま」と告げる相手ができた。「パペロさんは誰よりも親切で本当にかわいい」となでる。

 睦さんのスマホには、朝昼晩と和美さんの写真が届く。睦さんは出勤前と電車通勤時に、パペロアイに伝言を託すのが習慣になっている。移動中もできるため、連絡の頻度は電話より格段に増した。「便りがないのがいい便りだったが、今は母の生活パターンが分かって安心です」

 携帯電話やスマホが苦手な高齢者でも扱えるよう、三つのボタンと音声で動かせる。動画撮影の機能は付いてない。システムを開発したコンロッド(福岡市東区)の渡辺寛史社長は「高齢者は監視されるストレスを感じることなく、家族とコミュニケーションを取れる。緩やかな見守りを重視した」と強調する。

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 会話ができたり、外部の通信機器と連動したりするロボットは、2015年ごろから市場に出始めた。機能や外見は多彩で、本体価格は1万~10万円、月々のサービス利用料も無料~数千円とさまざまだ。

 MJI(東京)は卵形の「タピア」を開発。天気やニュースの読み上げ機能を備えるほか、家族のスマホと連動し、高齢者とロボットの会話の頻度を家族に通知する。家族はカメラを通じて部屋の様子を確認することもできる。

 オートバックスセブン(東京)が10月初旬に発売した手乗りのミミズク型「ズック」はAIを搭載する。長時間、部屋の中で動きがないなどの異常を感知したり、「腰が痛い」といった体の不調を訴える声掛けがあったりした場合、家族に通知する。

 総務省が16年、20~60代の1千人を対象に行ったネット調査では「会話やダンス、クイズ、ゲームの相手をするロボットサービス」は33%、「介護者を補助し、要介護者の健康状態を見守るロボットサービス」は35%が無料または有料で利用したいと答えている。

 行政の視線も熱い。愛媛県西条市は、パペロアイを活用した見守り事業を昨年度から開始。設置費用の半分を市が負担し、今年9月末時点で8世帯が利用している。市包括支援課は「民生委員も高齢化し、人に頼った見守りは厳しくなっている。家族は安心感を得られ、本人はロボットとの毎日のコミュニケーションで健康寿命を延ばせると期待している」という。

 鹿児島県西之表市や静岡県伊豆市なども、在宅高齢者の生活の質を高めるため、ロボットを活用した実証実験を進めている。

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 国立障害者リハビリテーションセンター研究所の井上剛伸・福祉機器開発部長によると、物忘れや軽度の認知機能低下が見られる高齢者がロボットを使用した結果、生活リズムの安定や薬の飲み忘れの減少、孤独感の緩和といった傾向が示されている。一方で「高齢者や家族がロボットに依存しすぎると、かえって孤立状態を招きかねない。ロボットが高齢者と家族や地域の間に入り、関わり合いを媒介するような在り方が望ましい」と話す。

 ロボットによっては行動を撮影する機能もあり、プライバシー保護と見守りの兼ね合いが課題とされる。神奈川工科大の三枝亮准教授(情報工学)は「家族や介助者は、本人の判断能力があるうちから、誰がどこまで私的な情報を受け取るかという『アクセスコントロール』について話し合っておくべきだ」としている。 (国崎万智)

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