マンション水害、九州も用心 電気、水 心臓部地下に 設計基準なく、対策も後手

西日本新聞 社会面 御厨 尚陽

 首都圏のタワーマンションをはじめ、多くのマンションに浸水や停電の被害をもたらした台風19号。九州でも近年の大雨で、マンションのライフラインが途絶えたケースがあった。地震に比べ、マンション水害は「人命に影響しない」として軽視され、「盲点」となってきた。異常気象による大雨で、入居者の生活がままならなくなる事態は今後も各地で起きる恐れがあるが、自治体の支援策も含め、対策は不十分なのが現状だ。

 「急にエレベーターが使えなくなり、非常に困った」。佐賀市では8月28日の大雨で10階建てマンションの地下部分が冠水し、エレベーターの動力機器が故障した。6階に住む女性(72)は足が悪く、復旧までの3日間はほとんど外出ができず「マンション住まいに水害は無縁だと思っていた」と振り返った。

 福岡市南区のマンションでも2009年、近くの那珂川が氾濫し、地下の給水ポンプが壊れ、3日間の断水を余儀なくされた。住民の男性(77)は「自炊も入浴もできず、不便で仕方なかった」と振り返る。その後、マンションでは止水板を使った浸水防止訓練を毎年実施しているという。

 建築基準法は地震や強風、降雪に対するマンションの設計基準は定めているが、水害について基準はない。

 マンション設計会社「翔設計」(東京)によると、特に地価の高い地域では電気室やポンプ室を地下フロアに設置することが多く、浸水被害に遭いやすいという。同社の呼子政史取締役は「販売戸数を増やすにはライフラインの心臓部を地下に置く必要があるため、水害に弱いマンションは多い」と打ち明ける。

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 水害の多発に伴い、マンション防災の在り方も変わりつつある。

 マンション管理組合を対象に地震対策の研修を実施する一般社団法人「マンションライフ継続支援協会」(東京)は、従来の研修内容に水害対策も加えたプログラムづくりに取り組んでおり、来年2月から実施する予定だ。前述の翔設計も16年からマンションの水害対策診断事業を展開。地下にポンプ室や電気室がある場合は出入り口を頑丈な水防扉にして、止水板を設置することなどを顧客側に提案している。

 一方、自治体の動きは鈍い。地震対策への助成制度は増えたが、水害対策の支援策は手つかずの状況だ。公益財団法人マンション管理センターが6月に全都道府県や政令市を調査したところ、水害対策に伴う改修工事に助成制度を設けているのは仙台市だけだったという。

 千葉大の小林秀樹教授(住環境計画)は「マンションの水害は盲点で、対策が不十分だった。防災意識を高めるためにも、自治体は居住者向けの災害対応マニュアルを作成するなどして、非常時への備えや防水対策の徹底を呼び掛けていくべきだ」と話した。 (御厨尚陽)

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水害補償の相談急増 台風相次ぎ保険会社に

 台風19号による大雨被害を受け、損害保険各社には水害補償に関する問い合わせが急増している。

 「水害が補償されるプランに変えたい」「契約が補償対象か確認したい」。三井住友海上火災保険には今月13~16日、問い合わせが通常の倍近くあった。担当者は「台風15号に続き、大きな被害が出たため関心が高まっている」と話す。

 あいおいニッセイ同和損保や損保ジャパン日本興亜でも同様の問い合わせは増加。損保ジャパンの担当者は「大規模な水害だったため、高台や川から離れた地域に住む人たちの意識も変わってきた」と分析する。

 内閣府の2015年度の試算では、全国の持ち家世帯の保険・共済加入率は火災が82%に対し、水害は66%にとどまる。16年の世論調査によると、未加入の理由は「水害は起きない」が43%、「保険料が高い」が17%だった。

 福岡市のファイナンシャルプランナー安部欽也さん(54)によると、持ち家世帯の多くが加入する住宅総合保険も、補償対象に水害が入っているが、掛け金を安くするため外すケースが多いという。安部さんは「ハザードマップで浸水被害が深刻と想定されていれば、加入した方がいい」と話している。

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