イノシシ撃退機に注文殺到、製造法公開 悲鳴を発信「農家の助けに」 福岡「発明王」

西日本新聞 一面 石黒 雅史

 元電機メーカー技術者で「里の発明王」とも呼ばれる福岡県みやこ町の漆谷正義さん(74)が、4年前に開発した「イノシシ撃退機」の製造方法を科学専門誌に公開した。1台1万円(税別)と安価で、動物に傷を負わせることもない機械に注文が相次ぎ、個人の手作業では製造が追い付かないためだ。一時は半年待ちになるほどで、ようやく仕上げて連絡すると、被害に耐えられず既に廃業していた農家もあった。「自由に作って、農産物の被害防止に役立てて」と話している。

 撃退機開発は地元果樹農家の要望がきっかけ。かつて手掛けた、警戒音でカラスを撃退する装置を応用した。農家に依頼し、わなに捕まったイノシシが苦しむ「キュイ~ン」という悲鳴を録音。これをスピーカーで繰り返し流す装置を作った。1辺約20センチの立方体型で重さ約3キロの木製で、外側には防水塗料。上部に太陽電池を備え、電源不要だ。

 2015年、新聞の紹介記事がネットで拡散し全国から注文が殺到。これまで約1230台を売ったが、製造は遅れがち。「これでは農家の助けにならない」と、情報開示を決意した。

 CQ出版社(東京)の「インターフェース」9月号に、部品の写真や型番・仕様、基本回路の図、購入できる場所などを公開し、詳しく解説している。

 同県小郡市の農業、中野芳幸さん(73)は昨年、サツマイモ畑の作付面積の約8割が被害に遭った。今年、撃退機2台を購入し設置すると、被害は約2割にまで減少。「近くにはイノシシが慌てて逃げ出したような足跡が残っていた」と効果を実感している。

 福岡県によると、獣類による18年度の農産物被害は約4億2600万円。うち3億700万円がイノシシ被害だ。漆谷さんは「注文の電話は農家の悲鳴に近かった。応じられないのは心苦しいので、電子回路の知識がある人は、このノウハウを活用してほしい」と話している。 (石黒雅史)

福岡県の天気予報

PR

福岡 アクセスランキング

PR

注目のテーマ