特定技能、青田買い過熱 東南アジアに教育拠点 試験遅れ受け入れは進まず

西日本新聞 一面 古川 幸太郎

 新たな在留資格「特定技能」を巡り、人手不足に直面する企業の人材獲得競争が過熱している。東南アジアを中心に教育拠点を開設したり、現地の学校と提携したりして、人材を囲い込む「青田買い」に力を入れる。ただ新制度の運用開始から半年が過ぎても、試験の遅れや出入国の準備が整わないことから、受け入れは思うように進まず、企業側には戸惑いも広がっている。

 外国人労働者のビザ申請を支援する「ワンビザ」(東京)は昨年9月、他社に先駆ける形でカンボジアに日本語学校を開設した。20代を中心に約250人が通う。外食業と宿泊業向けに人材を送り出す計画だ。

 授業料は無料。その代わりに受け入れる企業から紹介料をもらう仕組みだ。悪質ブローカーを排除し、借金を背負わせないことを目指している。

 だが、肝心の技能試験の日程が決まっておらず、「まだスタート地点にも立てない」と最高経営責任者の岡村アルベルト氏。既に語学力を身に付けた若者もいるという。

 自ら積極的に人材獲得に乗り出す企業もある。

 モスバーガーを展開する「モスフードサービス」はベトナムの国立ダナン観光短期大と提携。外食の知識や技能を学ぶ独自の教育課程を設け、2020年からの4年間で350人の採用を見込む。日本人と同等の条件で採用する計画で、最大5年間の就労後は出店予定のベトナムで幹部に登用するという。

 同短大のレ・デュク・チュン校長は「帰国後もダナンの観光産業で技術を生かせるから魅力的だ」と期待するが、ベトナムも試験日程が決まっておらず、計画通りに進むかは見通せない。

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 いち早く介護の技能試験が実施されたフィリピンもスムーズに進んでいない。関係者によると、出入国に向けた手続きが遅れているといい、合格した数百人が国内で“足止め”状態になっているという。

 「介護の特定技能を取得した人は要らないか」。東京都内にある介護施設には最近、フィリピンの仲介業者から営業の電話がかかってきたという。日本での受け入れ先を確保する狙いがあるとみられる。

 介護分野には、経済連携協定(EPA)や在留資格「介護」の枠組みもある。そのため、どの手段が最もメリットがあるのか、慎重に見極めている送り出し側の組織もあるという。

 特定技能の介護は5年間で6万人を受け入れる計画。介護人材コンサルタントの福原亮氏は「人手不足だからと言って『数』に頼るのではなく、しっかり教育した人材の『質』を求める必要がある」と指摘する。

 出入国在留管理庁によると、特定技能の資格を得たのは376人(9月末)にとどまる。最大4万7千人を受け入れる初年度の計画には程遠い。

 外国人政策に詳しい三菱UFJリサーチ&コンサルティングの加藤真氏は「適正に送り出し、受け入れるルートを構築するためには、制度の立ち上げ期にしっかり取り組むことが重要だ。少数でもマッチング例をしっかり分析して、業種ごとの制度の見直しにつなげてほしい」と話す。 (古川幸太郎)

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