大学入試の英語 「民間」導入は準備不足だ 

西日本新聞 オピニオン面

 準備の遅れは目に余ると言わざるを得ない。2020年度に始まる大学入学共通テストで導入するという英語民間検定試験のことである。原因は制度設計の甘さにあることを文部科学省は深く自覚すべきだ。

 全国の大学が実際にどれほど英語民間試験を利用するのか、文科省が集計結果(11日時点)を発表した。

 四年制大学の約7割(539校)が少なくとも一つの学部・学科で利用する予定で、短大を含めると約6割(630校)という。導入まで半年を切って、受験生が大学ごとの状況をおおよそ把握できるようになった。

 大学入試改革の目玉の一つだが、迷走ばかりが目立つ。7月には民間試験の一つ「TOEIC」の実施団体が「責任を持って対応を進めることが困難」として参加を辞退し、対象試験は6団体7種類に減った。9月から日本英語検定協会の「英検」の予約申し込みは始まったが、実施計画の詳細がまだ決まっていない試験もある。

 そもそも、目的が異なる各種民間試験の成績を一律に評価できるのか。大量の試験結果を全ての実施団体が厳格、公正に採点ができるのか。不正や事故に十分に対応できるのか。受験会場が少ない試験もあり、都市部と交通の便が悪い地方との受験機会の格差が生じかねない。特に中山間地や離島も少なくない九州では見過ごせない問題だ。

 いずれも民間試験導入の検討開始時点から指摘されてきた「公平と公正」に関わる重い課題だが、今に至るも解消されたとは言い難い。全国高等学校長協会は9月、現状を「先の見通せない混乱状況」と見なし、民間試験導入の延期と制度見直しを文科相に要望した。受験生の視点に立てば当然だろう。

 四年制大学の約7割が民間試験を使うとはいえ、その利用法はさまざまだ。共同通信によると、国立大の過半数は民間試験の成績が中学卒業レベルやそれ以下でも出願を認める方針という。つまり「形だけ」の利用である。背景には、課題を抱える民間試験導入に前のめりの文科省への不信感がうかがえる。

 日本の英語教育は長年、「読む・書く」能力の育成を重視してきた。「話す・聞く」も加えて4技能をバランス良く育むという方針に異論はない。ただ「民営化」してまで共通テストで4技能を問うことに、反対の声がなくなったわけではない。

 文科省は高校や大学の現場の声を重く受け止めるべきだ。試験本番の詳細を早急に詰め、速やかに情報公開し、導入延期も選択肢に入れる必要がある。受験生を入試改革の「実験台」にするようなことは許されない。

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