出所者、地域と歩む 孤立させず再犯防止へ 松山市で法務省モデル事業

西日本新聞 社会面 四宮 淳平

 息を潜めて暮らす更生保護施設の入所者と、どこか遠巻きに見守る住民-。社会復帰を支える場が、社会から隔絶されている現状を変えるため、法務省などは今月から、地域に開かれた更生保護施設をつくるモデル事業を始めた。施設には、帰る場所や頼る家族がない元受刑者らが一時的に身を寄せるが、退所後には孤立感から自暴自棄に陥り、再犯に至るケースが少なくない。刑務所から出て間もない段階で、世間とのつながりを深める狙いがある。

 全国103カ所の施設に先駆け、モデル事業を進めるのは松山市の更生保護施設「雄郡寮」(定員20人)。まずは来年1月に地域住民を招いた1日限定の「食堂」を開くため、インターネットで活動費を募るクラウドファンディングで寄付を呼び掛けている。資金は野菜を育てる農園のハウス整備や食材購入に充てる。目標額の40万円は既に突破したものの寄付者はまだ少なく、11月28日の締め切りまでに支援の裾野を広げたいとしている。

 雄郡寮施設長で社会福祉士の松田辰夫さん(67)は福岡刑務所などで勤務した元刑務官。長崎刑務所の処遇部長だった頃は、地元の更生保護施設などと連携し、高齢受刑者を支援する独自のプログラムを当時の刑務所長らと練り上げた経験がある。

 再犯防止には、住居と仕事のある安定した生活が有効とされるが、高齢や障害といった理由で就労が困難な人は少なくない。松田さんは「働けなくても役割があれば生きる意欲が湧き更生につながる」と考え、昨年8月、雄郡寮に農作業のプログラムを導入した。

 住宅街にある雄郡寮近くの耕作放棄地(120平方メートル)を地域住民から借り受け、ジャガイモやニンジンなどを栽培。住民と一緒に農作業をし、収穫した野菜が寮の食事で出されると、入居者の自尊心も向上していったという。この取り組みに法務省が注目し、モデル事業を打診した。

 刑法犯の摘発数は2004年から毎年減る一方、再犯者が占める割合は増加。04年の35・7%から17年は48・7%となった。就労が難しいと思われる65歳以上の再犯者率は5割を超えている。雄郡寮でも、周辺住民に「更生保護施設の存在を知らなかったし、知っても遠巻きに見ている人が多く、地域に溶け込むには時間がかかる」という声はあるが、ある女性(73)は農園作業で「寮生と話す機会が増えた」と変化を実感しているという。

 更生保護施設の入所期間は原則的に最大6カ月まで。住居や職探しも支援しており、松田さんは「顔なじみのできた地域で暮らし、農作業などの交流を続けてほしい」と話す。退所後の生活支援を通じて地域とのつながりを構築し、孤立化を防ぎたいという。

 法務省保護局の今福章二局長は「これまで関心がなかった人に更生保護分野に目を向けてもらいたいし、全国の更生保護施設でも地域や支援者とのつながりが広がる契機になれば」と期待を込める。 (四宮淳平)

◆クラウドファンディングのURL=https://camp-fire.jp/projects/view/195564

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