故郷で歌舞伎、夢のよう 若松出身の中村かなめさん 「平成中村座小倉城」に出演

西日本新聞 北九州版 東 祐一郎

 北九州市で11月1日に始まる九州初上陸の歌舞伎「平成中村座小倉城公演」に、同市若松区出身の歌舞伎俳優中村かなめさん(43)が出演する。小倉藩のお家騒動を題材にした「小笠原騒動」では「酒屋健蔵」役で中村七之助さんらと掛け合いを演じる。「故郷で歌舞伎の舞台に立てるなんて夢のようだ」。市文化大使も務めるかなめさんは本番を目前に控え、稽古に力が入っている。

 28日、中村勘九郎さん、七之助さん兄弟らが勢ぞろいした同市内の稽古場には、かなめさんの張りのある声が響いた。かなめさんは舞踊「お祭り」にも出演する。「最高の歌舞伎をお客さんに見てもらうため、最後まで気は抜けない」と、緊張した表情で話した。

■3歳から日舞

 かなめさんは日本舞踊勝美流師範の母勝美藤乃さん(72)の影響で3歳から舞踊を始めた。母の厳しい指導の下、小さい頃から寝る暇も惜しんで稽古に励んだ。

 高校卒業後は、服飾系の専門学校に進学。卒業を間近に控えた20歳の頃、バイト先のショットバーに藤乃さんが突然訪ねてきた。普段酒を飲まない母は息子に話し掛けるわけでもなく、ウイスキー2杯を飲んで出て行った。その数時間後、電話でこう告げられた。

 「これからの人生をどうするのか。願書を出したから受けてみなさい」

 歌舞伎俳優の養成所である国立劇場(東京)の研修生の願書を勝手に提出していた。ずっと歌舞伎俳優に憧れていた母は息子にその思いを託そうとしたようだ。かなめさん自身、歌舞伎に興味がないわけではなかった。小論文と面接の試験を受けて「狭き門」を突破。2年間、演技や鼓、三味線などの稽古に朝から晩まで取り組んだ。

 研修を終えて2001年に3代目中村扇雀さんに弟子入りし、「中村扇一朗」の名を授かった。舞台の黒子や師匠の世話役に奔走し、365日、休日もプライベートな時間も全くない日々。芝居の脇役として舞台に立ち、間近で先輩の芸を見て覚えた。

■下積み10年超

 初の「大役」に挑んだのは02年に大阪で行われた平成中村座。「双面水照月」の「娘おくみ」役だった。「自分ができるのか」と重圧に負けそうになりながらも日々精進した。勘九郎さんらの父、故中村勘三郎さんや扇雀さんらから毎日遅くまで稽古をつけてもらい、役を見事に演じきった。

 十数年にわたる下積み生活を経て14年秋には一人前の歌舞伎俳優の証しともされる「名題(なだい)」になり、翌年、扇一朗を改め「中村かなめ」となった。

 公演には藤乃さんや多くの地元の友人たちも駆け付ける。「地元の公演に出演できることは、役者冥利(みょうり)に尽きると思った。北九州には歌舞伎が深く根付いているとは言えない気がする。演目は若い人が見ても楽しめる内容で、歌舞伎に触れて好きになってほしい」。いい演技を披露することで盛り上げたいと意気込んでいる。 (東祐一郎)

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