【ラガーマン記者が読み解くW杯】ゼロからラグビー(14)接点 前へ、瞬時に動かせ

西日本新聞 入江 剛史

 ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会の準決勝で、イングランド代表が26日、史上初の3連覇を狙ったニュージーランド代表を19-7で破った。変幻自在の戦いを見せてきた「最強王者」のニュージーランド。優勝候補の筆頭が、なすすべもなく敗れたのはなぜか-。

 「ニュージーランドはゴッド(神様)。勢いをそがないといけない」

 10年近く世界ランクトップに君臨してきた王者に対し、前回W杯で日本を率いて南アフリカから大金星を奪ったエディー・ジョーンズ監督の戦略がはまった。

 イングランドは、原則としてパスでボールを大きく下げず、「ゲインライン」を意識した戦いに徹した。

 ゲインラインとは、スクラムやラック(地面に着いたボールの上で敵味方で押し合う)などの真ん中で敵味方を分ける境界線を仮想し、その線をゴールラインと水平方向に引っ張ったものだ。

 このラインを越える攻撃ができれば、防御側の意識は密集に向かい、選手はその周辺に集まりやすくなる。ゲインラインを越える攻撃を重ね、中央付近に防御選手を集め、空いた外側のスペースを攻めるのが鉄則だ。

 試合開始42秒。その意思は明確だった。

 イングランドはラインアウトのボールを確保すると、突破力のあるセンター(13番)のツイランギ選手が突っ込み、さらにフォワード(FW)を当ててゲインラインを突破。そこから外に展開して前進し、連続攻撃を仕掛けた。

 密集からパスを受けた右プロップ(3番)のシンクラー選手が、相手のタックルを受けながらボールをつなぐオフロードパス。後方でボールを受けたバックス(BK)が一気にゴールに迫り、最後は力で押し切って先制トライを奪った。

 イングランドはBKで攻めるときにはツイランギ選手を、密集周辺の攻撃であればシンクラー選手やB・ブニポラ選手らFWを、シンプルに突進させた。防御の上がりがそう早くないニュージーランドの選手は、一歩二歩と下がった。

    ◆    ◆

 敵味方がぶつかり合う点を「接点」と呼ぶ。

 イングランドは、この接点を前に持っていき、ゲインラインを越えようとするだけでなく、その接点から素早く次の攻撃につなげる意識も高かった。

 先制トライにつながった最大のポイントは、シンクラー選手のオフロードパスだ。

 ここでシンクラー選手が倒れてラックになってしまうと、ボールを出すのに一定の時間がかかる。その間に防御ラインが整って、空いていたスペースは埋まってしまう。

 かつてはラックを連続してボールを保持し、スペースが空くのを待つチームも多かった。だが、近年は防御側がラックにかける人数が減っている。タックラーのほかに、倒れた選手からボールをもぎ取るジャッカルなどを狙う2人目の選手ぐらいしかボールの争奪戦に参加しない。ラックを捨て多くの選手が防御ラインに並ぶために、スペースが空かなくなった。

 防御が高度化する中で注目されるようになったのが、倒れながらでも片手でもパスでつなぐオフロードパス。パスミスなどが起きる恐れはあるが、狭いながらも空いたスペースに走り込んだ選手にパスがつながれば、一気に前進できる。

 オフロードパスの存在は、日本がスコットランド戦で3連続で決めてトライを奪ったことで〝決め技〟として脚光を浴びた。ただ、イングランドはFWが中央付近でオフロードパスを使って後方のBKにボールを託し、素早く外に展開。〝つなぎの技〟として効いた。

 相手に当たった選手がパスをつなげる優位な状況を作ることが、オフロードパス成功の条件。実際はラックになることが多いが、ここでもイングランドは早くボールを動かす意識を見せた。

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