【ラガーマン記者が読み解くW杯】ゼロからラグビー(14)接点 前へ、瞬時に動かせ (2ページ目)

西日本新聞 入江 剛史

 密集から球出しするスクラムハーフ(9番)が遅れたらFWのシンクラー選手が代わりにパス。FWが密集のボールを拾い上げて前に出る動きも目立った。停滞させず、常に動かす-。ニュージーランドの勢いをそぐように圧力をかけ続けた。

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 イングランドはニュージーランドを自陣に封じ込め、防御で後退させた。

 イングランドのトライは開始1分の1本だけ。後はペナルティーゴール(PG)4本による得点だった。

 これに対し、ニュージーランドの得点はイングランドのミスから取ったトライとゴールキックのみ。敵陣に入ってPGを狙う機会は一度もなかった。

 イングランドはスタンドオフ(10番)が本職のファレル選手をセンター(12番)にして、スタンドオフにフォード選手を置く布陣で臨んだ。司令塔として攻め手を判断でき、キックに秀でた選手を増やした。

 フォード選手が密集後方から正確なキックで相手の背後を取れば、ファレル選手はランで仕掛けながら防御ラインの裏にキックを転がして前進。後手に回ったニュージーランドはタッチラインの外にボールを蹴り出すほかなく、自陣にくぎ付けに。イングランドはラインアウトから得意のモールで攻めた。

 防御では、長いパスで一気に外側にボールを運ぼうとするニュージーランドを追い込んだ。

 長いパスを放ろうとする攻撃側の選手に対し、外側にいるセンター(13番)のツイランギ選手が飛び出してインターセプトを狙った。そしてパスの出し先を失って惑うニュージーランドの選手に別の選手がタックルを浴びせた。

 長いパスを受ける選手も狙い打ちにした。ボールが空中に浮いている間に間合いを詰め、ツイランギ選手やフランカー(7番)のアンダーヒル選手が激しくタックルし、あおむけに倒した。外側にボールを運ばれても、イングランドの選手は内側から懸命に戻り、ニュージーランドの選手をタッチラインの外に押し出した。

 防御の圧力を受け続けた「最強王者」に狂いが生じ始めた。

 ニュージーランドは相手からボールを奪った瞬間に、攻守が切り替わった瞬間に、パスをつないで一気にトライまで奪ってきた。だが、この試合は、らしくないパスミスを繰り返し、好機をつくり出せなかった。

 焦りがにじむニュージーランドは、規律も乱れた。FWが相手の頭を突き飛ばして倒す反則。狂った歯車はもう戻らない。

 80分が経過、残り時間がなくなりプレーが止まれば試合は終わる最後の場面。12点差で、トライを奪っても逆転はない。それでもニュージーランドは攻め続けた。ところがこの日の試合を象徴するように、ボールを回せば回すほど防御の圧力で後退していく-。

 最後に、イングランドのタックルが激しく刺さった。ニュージーランドの選手の手元から、ボールとともに3連覇がこぼれ落ちた。(入江剛史)

 (随時掲載します)

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 いりえ・つよし 福岡高でラグビーを始め、早稲田大でスクラム最前列のプロップとして公式戦出場。西日本新聞入社後は勤務の傍ら、旧朝倉農業高(福岡県)、福岡高、大分東明高などでコーチを務める。ラグビーW杯日本大会を1年後に控えた昨年夏、九州で唯一、キャンプ地にも試合会場にもなっていない佐賀に赴任。ただ、小学生の息子が佐賀でラグビーを始め、週末の練習が楽しみで仕方がない。録画した試合を見ながらの晩酌がほぼ日課。46歳。

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