英語入試、不公平さ露呈 「身の丈発言」文科相撤回

西日本新聞 社会面 河合 仁志 湯之前 八州 金沢 皓介

 大学入学共通テストで導入される英語民間検定試験を巡り、萩生田光一文部科学相が「身の丈に合わせて頑張って」と発言したことが波紋を広げている。経済的に余裕がない家庭の子どもや、離島や山間部の受験生が不利になることを容認したとも受け取れるためだ。親の所得や育った環境で受験の公平性がゆがめられていいのか。新制度の旗振り役を担う閣僚の不用意な発言に、九州でも高校生や親から怒りと不安の声が相次ぐ。

 「都会の子と同じスタートラインに立てないのを大臣が認めるのだとしたら納得がいかない」。鹿児島県の離島に住む県立高1年男子(16)は憤った。

 6人きょうだいの末っ子。学生は自分だけだが、まだ親に生活費を頼るきょうだいもおり、家計が楽でないことを知っている。地域に塾はほとんどなく、模擬試験を受ける機会も少ない。新制度で大学受験することになるが、ただでさえ不利な島の受験生がさらに不利にならないか心配だ。

 新制度は「英検」など7種類の民間試験の成績を大学が合否判定に活用する。受験料が2万5千円超と高額だったり、会場が都市部に偏っていたりする試験があり、以前から「不公平」と批判されてきた。

 萩生田氏の発言は、24日放送のBSフジの番組で飛び出した。入試の際に登録できる成績は高校3年以降の4~12月に受ける2回までだが、経済的に恵まれた受験生が何度も練習で受ける可能性を認めた上で「身の丈に合わせて2回をきちんと選んで」と述べた。

 「今でも経済的理由で模擬試験をためらう子がいる。文科相は現場を分かっているのか」。宮崎県の公立高の40代教諭はあきれ顔でこう話す。熊本県南阿蘇村の女性(52)は、高校2年の娘が受験会場の多い英検に絞って試験対策を進めていることを明かし「田舎の受験生にとって、やる気がそがれる制度だ」と疑問を投げる。

 萩生田氏は28日、「受験生に不安を与えた」などと陳謝し、29日の記者会見で発言を撤回した。ただ、民間試験導入については「さまざまな課題があるのは承知の上で取り組んできた。さらに足らざる点を補いながら、予定通り実施したい」と述べた。

 もう再考することはないのか。福岡教育大の中島亨教授(英語音声教育)は「このままだと恵まれた受験生ほど試験対策ができ、教育の機会均等を崩す。導入は時期尚早。最終的には撤回すべきだ」。福岡県久留米市の高校2年女子(17)は「一生を左右する試験だから、どんな環境でも平等でないといけないと思う」と訴える。 (金沢皓介、河合仁志、湯之前八州)

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BSフジ番組(24日放送)での萩生田光一文部科学相の発言

 (司会)民間の資格試験を使うということは、お金や場所、地理的な条件で恵まれている人が受ける回数が増えるのか。公平性はどうか。

 (萩生田氏)それを言ったら「あいつ予備校通っていてずるいよな」というのと同じだと思う。裕福な家庭の子が回数受けてウオーミングアップができるみたいなことは、もしかしたらあるかもしれないけれど、そこは自分の身の丈に合わせて、2回をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえば。

 できるだけ近くに会場をつくれるように業者や団体の皆さんにはお願いをしている。だけど、人生のうち自分の志で1回や2回は古里から出て試験を受ける。そういう緊張感も大事かなと思うんで、その辺、できるだけ負担がないような、いろいろ知恵を出していきたいと思う。

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