介護と育児 ダブルケアの不安 休暇制度の充実 国が議論開始 就労しやすい環境…1時間単位の取得へ

西日本新聞 くらし面 河野 賢治

 親や子の体調不良で急に休みが必要になるなど、介護や子育て中の人が仕事を続けていくには多くの壁がある。近年は介護離職のほか、介護と育児が重なる「ダブルケア」の人が抱える問題も指摘され、公的な休業・休暇制度の充実を求める声が高まってきた。その一つ「介護休暇」を柔軟に取得できるようにする制度改正の議論が、今月から始まった。働く環境の改善につながるか注目される。

 熊本県荒尾市の黒崎麻子さん(41)は同居の義母が体調を崩したのを機に、幼稚園教諭を辞めた。その後、2012年と14年に出産。義母は認知症にもなり、ダブルケアが始まった。

 義母は4診療科の定期検診が必要で、そのたび付き添った。転倒すると週の半分は整骨院に送迎。体調を崩すと診療時間外に病院に駆け込んだ。夜中にトイレの世話をする日もあった。

 子どもの病気と介護、自分の体調不良が重なったときは、過労と診断されて入院を勧められても踏み切れなかった。周囲の協力はあったが、負担は重かった。

 転機は17年。ある時期から利用を始めた介護保険事業所や認定こども園の担当者などから「仕事をしていないから家にいますよね。それなら…」と家庭でのさらなる対応を求められた。「どこまでできないといけないのか、分からなくなった」。思い切ってダブルケアから離れる時間をつくろうと、仕事を始めた。

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 黒崎さんは今、医療事務の仕事に就いている。社会と接点ができたことがうれしいという。義母は昨年亡くなり、ダブルケアの相手は同居の義父(81)と子ども2人になった。

 義父は酸素を機器で吸入する在宅酸素療法を続けている。体調悪化で病院に駆け込むことも。勤務を早く切り上げるなどして対応している。「今の職場は介護休暇でなくても小刻みに休みをもらえ、恵まれている。でも別の会社だったら難しいと思う」

 黒崎さんのようにダブルケアに直面する人は、内閣府が12年の就業構造基本調査から推計したところ、約25万人に上った。少子化や晩産化で、その数は今後も増えそうだ。

 一方、「介護離職ゼロ」を掲げる政府は、対策として在宅や施設の受け皿整備をうたう。介護をしていても就労を望む人は多い。こうした労働者を支える制度の一つが、育児・介護休業法で定められた介護休業と介護休暇。介護休業は家族1人につき最長93日。介護休暇は家族1人当たり年5日だが、口頭でも申請でき、突発的な対応にきめ細かく対応できる利点がある。

 そこで政府は今年6月、介護休暇を柔軟に取得できるようにする方針を閣議決定した。現行制度は「1日」か「半日」単位だが、1時間単位で取れるようにする。介護の専門職との相談は短時間で済むことがあり、必要な時間に応じて取得できるようにする方針だ。

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 制度改正の議論は2日から、厚生労働省の審議会の分科会で始まっている。

 委員を務める連合(東京)総合男女・雇用平等局の井上久美枝局長は「介護休暇を半日単位で取る場合、始業時刻から半日か、終業時刻までの半日か、どちらかの方法になる。突発的な対応のため、時間単位の取得を早く始めるべきだ」と指摘。介護休暇と同様に17年から半日単位で取れるようになった子どもの看護休暇も、時間単位を認めるよう求め、28日に厚労省から案が示された。

 ただ、使用者側には「4月からの働き方改革で業務システムを変更したばかりなのに、事務作業が増える」「勤怠管理が煩雑になる」と難色を示す声があるという。17年から義務化された育児、介護休業などを理由とするハラスメント防止措置も、職場への周知がまだ課題として残る。

 黒崎さんは、介護休暇などの休業・休暇制度が充実していれば、ダブルケアを担う人などがもっと就労できると感じている。「働きながら介護や育児を担う人が、希望すれば離職せずに済み、もし退職しても再就職しやすい環境をつくってほしい」と望む。

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 黒崎さんは、ダブルケアを担う人などが育児や介護の情報、悩みを話し合う場を設けている。11月は13日に福岡県大牟田市の菅原病院敷地内で、22日に熊本県荒尾市の妙国寺で開く。参加費は資料代などとして大人200円。事前申し込みが必要。黒崎さん=080(4691)3966。 (河野賢治)

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